銀行のコンサルティング機能の発揮
[要旨]
中小企業等金融円滑化法が施行されていたときなどに、銀行は、融資相手の会社に対して、コンサルティング機能を発揮するよう求められていました。しかし、銀行が行うコンサルティングは、融資を行う側の視点でのコンサルティングになってしまいがちなので、融資を受けている会社は、受動的にコンサルティングを受けることになる場合もあります。
[本文]
前回、銀行は、融資相手の会社に対し、支援活動のひとつとして、しばしば、助言を与えており、そのことは融資を受けている会社にとって有用であるが、助言を与えることはコンサルティングではないということを述べました。今回は、銀行が融資相手の会社に対するコンサルティングについて、別の側面から述べたいと思います。以前から、銀行には、コンサルティング機能を発揮することが望ましいと言われてきました。
これは、特に、中小企業等金融円滑化法、いわゆるモラトリアム法(2013年3月で失効)のときに、金融機関に対して求められました。では、なぜ、銀行に対してコンサルティング機能の発揮が求められたのかというと、銀行が融資相手の会社を支援することで、融資相手の会社の業績が回復し、融資を行いやすくなるからであり、また、そのことによって地域経済が活性化すれば、銀行も経営基盤の安定につながると考えられたからです。
この考え方は正しいと思いますが、その原因の説明は割愛しますが、結果として、あまり奏功しませんでした。ただ、ここで述べたいことは、「銀行のコンサルティング機能の発揮」というのは、融資を行う銀行が、融資をしやすくすることが目的になっているということです。これは、実態としては、融資を増やすことが目的となってしまうので、融資をする側の視点でしかコンサルティングが行われません。
もちろん、そうであっても、融資を受ける会社にとっても有用ではあるものの、必ずしも、融資を受ける会社にとって十分なコンサルティングになるとは限りません。別の言い方をすれば、融資を受けている会社が受動的に銀行のコンサルティングを受けることにもつながりかねません。本当のコンサルティングは、コンサルティングを受ける会社が主体的になるべきであり、おしつけのコンサルティングが起きるようなことは避けるべきでしょう。
2021/12/3 No.1815