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[要旨]

三井住友信託銀行は、「持ち合い先の企業が3年連続で最終赤字となった場合には、取締役の選任に反対する」方針を打ち出しました。このような傾向は、本来の株主主権で運営される会社を増やすことにつながると思われますので、義理人情といった、人間的な関係での取引や活動は、解消されていくでしょう。


[本文]

日本放送協会が、三井住友信託銀行の持合株式の議決権行使に関する対応の変更について報道していました。具体的には、「持ち合い先の企業が3年連続で最終赤字となった場合には、取締役の選任に反対する」そうです。このような動きは、「株式の持ち合いは日本独特の慣行と言われ、株主総会で持ち合い先が提案する議案に反対しないことも多いことから、企業統治のうえで課題になっているとして、東証が上場企業に対し、持ち合いの株式を削減するよう促している」ことが背景のようです。

この、議決権行使や、株式持合解消ような動きは、他にも、コーポレートがバンスコードの制定なども見られます。そして、そのような動きは、上場会社としてあるべき状況を目指すものであり、当然のことと思います。しかし、実情として、日本の会社の多くは従業員が大きなイニシアティブを持っているので、株主が主権を持つという、文字通りの「株式会社」の運営は、しばらくは抵抗があるかもしれません。

ただ、従業員(従業員から昇格した経営者も含みます)がイニシアティブを持っていることによって行われる、義理、人情、浪花節的な取引はなくなっていくでしょう。そのひとつの例が、前述の、株式持合の解消による、「もの言わない株主」がいなくなっていくということです。

また、ひとつの例として、「日本郵便のコンプライアンス部門担当だった元常務執行役員が、内規違反の内部通報の情報を、違反を通報された人物の父親である元郵便局長に伝えていた」という事件が起きました。これは、株主の利益を無視し、従業員の都合を優先する行為ですが、このようなことはが起きたのは、これまで株主主権を意識してきた人が少なかったからだと、私は考えています。これからは、このようなことを含め、従来の考え方を変えなければならないことが増えてくるでしょう。

2021/11/14 No.1796

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