2ピザチームが組織開発に最適
[要旨]
VUCA病になっている組織を改善するためには、組織開発を行うことが有効です。組織開発は、課題を可視化し、それメンバーで共有し、組織のあり方を自分で決めていくことですが、これを効率的に実践するためには、8~10人のチームに分けて行なうことが効果的です。
[本文]
今回も、前回に引き続き、立教大学経営学部の中原淳教授の著書、「チームワーキング-ケースとデータで学ぶ『最強チーム』のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回までの3回で、「VUCA病」について説明してきましたが、中原教授は、これを改善するために、「組織開発」の手法を提案しておられます。ちなみに、中原教授は、組織開発について、(1)組織が抱える課題を調査などによって、「見える化」し、(2)そのデータを組織メンバーで共有し、「対話」を行い、(3)自分たちの組織のあり方を自分たちで決めていくこととご説明しておられます。そして、その具体的な活動を、次のようにご説明しておられます。
「組織開発には、会社全体といった大きな組織から、事業部門、部門・部署、課、というように、サイズや構成によってさまざまなアプローチが考えられますが、最終的には、半径3メートルから5メートルの小さな集団、『チーム』でどのようにチームワーク向上を図るか、というところに行き着きます。多くの人々が、日常の長い時間を過ごすのは、半径3メートルから5メートルの小さな集団だからです。その影響力は最も大きいのです。どうしたら、チームメンバー全員が、それぞれの能力を最大限発揮し、助け合いながら目標を達成できるのか、これは人類にとって、チームでナウマンゾウを倒していた頃から変わらぬ永遠のテーマかもしれません。どんな巨大企業でも、大切なのは、「半径3メートルの世界」なのです。Amazonには、「Two pizza team」という言葉があるそうです。チームで、最も生産性や創造性が上がるのは、『2枚のピザでみんなの食事が足りるぐらいの小さなチーム』だということです」(47ページ)
人材開発については、多くの方がご存知と思いますが、それに類似する言葉である組織開発は、組織の構成員の相互作用を高める働きかけです。もちろん、人材開発によって、個人の能力を高めることで、その人の所属する組織の成果は高くなることはあります。でも、人材開発だけでは組織の成果を高めることに限界がありますし、個人の能力だけを高めるのでよいのであれば、組織として活動する意味もありません。そこで、組織としての成果を高める働きかけが必要であり、それが組織開発です。繰り返しになりますが、組織開発の場合、組織的な活動で組織の成果を高めることを目的にしているので、組織の構成員の相互作用がその対象となります。
そこで、組織開発では、中原教授の説明のように、「見える化」、「対話」、「組織のあり方を決める」という活動を行うことになるのでしょう。さらに、「半径3~5mの小さな集団」や、「2ピザチーム」という表現が使われていますが、これは、具体的には8~10人の人数を指していると思われます。この人数が、組織開発を最も効率的に行うことができる人数ということなのでしょう。では、なぜ、8~10人なのかというと、私は、濃いコミュニケーションを確保し、かつ、構成員の参画意識を保つことができる人数なのだと思います。11人以上は、濃いコミュニケーションを確保したり、参画意識を維持することが難しいということなのでしょう。これは、会社の中で従業員が10人を超えた場合は、何でも社長が指揮をするのではなく、10人以内のチームをつくり、リーダーを通して指導させる必要があるということです。
2023/5/1 No.2329
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