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経営理念をつくれば成功の確率が高まる

[要旨]

経営環境が不透明になっていることから、経営理念を定めることに意味はないと考える経営者の方は多いようです。しかし、経営環境が不透明だからこそ、経営理念を定め、会社の進む方向を明確にすることで、日々の活動が研ぎ澄まされ、業績が向上すると考えることができます。

[本文]

元千葉ジェッツふなばし会長で、現在は、プロバスケットボールのBリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読みました。この本のテーマは、「経営理念が大切」ということであり、島田さんも、経営理念を業績の不振な会社に浸透させ、業績を回復させた経験を述べておられます。そして、まず、島田さんは、なぜ、経営理念が大切なのかと言うことを説明しておられます。

「そもそも、会社経営とは、雲をつかむようなもの。子育てと同じで、『ままならないもの』です。社会情勢や、経済、あるいは、自然環境など、不確定要素に取り囲まれた企業活動に絶対の正解などありません。そんな霧の中のような状態であっても、『この方向に向かうのだ』という行き先を示し、大小さまざまなPDCAをまわして、目の前の目標を一里塚のようにクリアしていくことで、成功の確率を上げていくのが経営です。

特に起ち上げたばかりのころは、ふわふわしてつかみどころがなく、そのままにしておくと、あっという間に事業は行き詰まってしまいます。そういう危機的局面を迎えないために、必要なのが、経営理念をつくることです。その経営理念に沿って経営目標を定め、中長期計画を立て、具体的な戦術を練る。ここまできて、ようやく社員それぞれに目標を設定することができます」(28ページ)

私も、中小企業の事業改善のお手伝いをして感じることは、経営環境が不透明なのだから、そんな中で、経営理念を定めても意味が無いと考えている経営者の方が多いということです。確かに、経営環境が不透明なのだから、事業の見通しも不透明であり、そんな中で、「経営理念」をつくったところで、果たして、それが実現するのかどうかわからないのだから、あまり労力をかけることに意味はないと考えることは、ある面で理解できます。しかし、VUCAの時代だからこそ、経営理念は、より必要性が高いと私は考えているし、島田さんも同様に考えていると思います。

その最大の理由は、私は、経営理念は、ステークホルダーに対する経営者のコミットメントだからです。もし、コミットメントがなければ、日々、商品を販売して利益を得るという、ある意味、あまり意義を感じることができない活動の繰り返しに終始してしまうことになると思います。そこで、有名な、「3人の石工」の話を思い浮かべていただくと、理解が容易になると思います。「3人の石工」の話とは、「何をしているのか」ときかれた3人の石工のうち、1人目は、「これで食べている」、2人目は、「国で一番の仕事をしている」、3人目は、「教会を建てている」と答えるというものです。

この話の「石工」を「会社」に置き換えて考えてみれば、理解が容易になると思います。もし、経営理念がない会社は、1人目の石工のように、日々、利益を稼ぐためだけに事業活動をしていることになるでしょう。でも、経営理念を定めた会社は、3人目の石工のように、大きな仕事を実現するためと考えながら事業活動をしていることになるでしょう。そして、どちらの会社が業績がよくなるかということは、言うまでもないことが分かるでしょう。ですから、経営理念を定めることは重要ということです。

2023/7/11 No.2400

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