債務償還年数は10年以内が原則
[要旨]
銀行が融資審査を行うときは、債務償還年数を重視しています。これは、融資総額をキャッシュフロー(=営業利益+減価償却費)で除した数値で、5年以内が理想、10年以内が目安と言われています。そこで、中小企業はキャッシュフローを増やす努力と、正確にキャッシュフローを把握できる仕組の整備が重要です。
[本文]
今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、会社の借入限度額に関する考え方のひとつとして、債務償還年数についてご説明しておられます。
「銀行が融資の審査をするときに、会社の格付を行いますが、その格付の中で最も重視する指標が、『債務償還年数』です。簡単に言うと、『その会社が借入金を何年で返せる能力があるか』という指標です。具体的には、会社の借入金の合計額を、年間キャッシュフロー(営業利益と減価償却費の合計額)で除した数値です。(中略)一般的には、債務償還年数は5年以内が理想と言われています。(中略)
最近では、銀行に対する金融庁の指導が厳しくなってきて、この債務償還年数が10年以上の融資先企業は貸倒リスクが大きいとみなされて、マークされるようになっています。このため、銀行も融資返済能力がない企業への貸出には、とても消極的になっていて、融資枠の縮小を迫られる企業も少なくありません。したがって、いまの借金を最低10年で返済できる分だけのキャッシュフローは、常にキープしなければなりません」(154ページ)
私も、基本的には、児玉さんの考え方は正しいと思います。しかし、債務償還年数が5年以下の会社はそれほど多くないことも実態です。また、債務償還年数が10年以上の会社も決して珍しくありません。さらに、中小企業の場合、会計基準を厳格に適用している会社が少ないので、キャッシュフローの額も正確ではないと、私は考えています。
このような状況から、私は、銀行が融資審査をする場合、債務償還年数を厳格に適用はしていないと思います。すなわち、債務償還年数が10年であっても、将来のキャッシュフローを見込むことができれば融資に応じることもあると思いますし、逆に、債務償還年数が5年であっても、今後のキャッシュフローが減少すると見込まれれば、融資を断ることもあるということです。
しかしながら、キャッシュフローが重要だということに変わりはありません。そこで、私は、中小企業も、中小会計要領か中小会計指針を適用し、より精度の高いキャッシュフローを把握できるようにして、銀行に正しい判断をしてもらえるようにすることが重要だと思います。もちろん、会計記録の厳格さだけでなく、キャッシュフローを増やすための活動も重要です。
2022/12/23 No.2200
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