手形を止めたら優秀な会社が集まった
[要旨]
阪神佐藤興産は、協力会社への代金支払いについて、支払手形での支払いを止め、また、当月末、または、翌月15日に振込みによる支払いにしているそうです。その結果、多くの会社が同社との取引を望むようになり、優秀な会社が同社と取引するようになったそうです。
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今回も、前回に引き続き、阪神佐藤興産の社長の、佐藤祐一郎さんのご著書、「小さくても勝てる!~行列のできる会社・人のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、阪神佐藤興産は、銀行から融資取引のセールスを受けた時に、融資を契約するバーターとして、顧客の紹介を依頼し、さらに、銀行から紹介された顧客とは、直ちに社長と交渉できる上に、銀行のお墨付きのある信頼できる取引先でもあるというメリットがあることから、効率益な営業活動を行っているということを説明しました。
これに続いて、佐藤さんは、協力工事会社への代金支払いに、支払手形を使わなくなったことについて述べておられます。「7年ほど前に、当社としては、支払手形をなくしました。建設業界は、入金にも支払いにも、まだまだ手形が流通しています、資金的に余裕があるのに、手形で支払うことに、ほとんど意味はありません。支払手形をやめることで、不渡りによる倒産も起こらなくなります。
資金繰りに注視していく必要はありますが、より、つぶれない経営を行なうことができるようになったと言うことができるでしょう。支払を手形から振込みにしましたが、当社の締め日は、毎月17日で、協力工事会社への工事代金は、業種によって、当月末か、翌月15日には振り込むようにしています。当社は、外注先にとって、とても支払いぶりのよい会社であると思います。これも資金繰りに余裕があるからこそできることです。さらには、支払条件をよくすると、優秀な協力会社さんが集まりやすくなるメリットもあります」
前回は、佐藤さんは、銀行から融資を受ける代わりに、顧客の紹介をしもらっているということをご説明しましたが、今回は、さらに、受けた融資金で手形での代金支払いをなくすことで、優秀な協力会社を集めることに活用していると述べておられます。まさに、一石三鳥だと思います。取引先にとって、当月、または、翌月に、手形ではなく、振り込みによって代金を受け取ることができるということは、特に建設業界にとってはとても魅力的と言えるでしょう。代金が早く受け取ることができれば、その会社は、安定的に事業活動ができるわけですから、なるべく阪神佐藤興産から受注しようということになるでしょう。
そして、協力会社に対して、同社のような対応を行うようにすることは、なかなか、真似をできることではありません。だからこそ、同社は、質のよい工事を行うことが可能となり、競争力を高めていると言えるでしょう。すなわち、これも、以前にお伝えしたことですが、競争力を高める要因には、品質、価格、納期などだけでなく、支払い条件などの取引条件もあるということです。したがって、現在、自社の競争力の強化に悩んでおられる経営者の方は、取引条件の改善という観点から改善の方法を検討してみることをお薦めします。
2023/12/23 No.2565