[要旨]
経営コンサルタントの杉浦央晃さんは、主力となる事業のほかに、いくつかの事業を展開することが、リスクを分散することになり、重要な考え方であるとご指摘しておられます。さらに、複数の事業を同時に展開することは、マネジメントノウハウを複数の事業で活かすことができるという観点からも効率性が高いと言えます。
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今回も、経営コンサルタントの杉浦央晃さんのご著書、「もし明日自分が死んだら-残された我が子に親父から伝えたい10の言葉」を読んで、私が気づいたことについて述べます。前回は、他者の助言が100%正しいとは限りませんが、人は無意識のうちに自分の苦手なことを避けようとしてしまうので、素直に他者の助言を実践することで、成功する確率が高まるということを説明しました。
これに続いて、杉浦さんは、「二宮力」も大切であるということについて述べておられます。「(「二宮力」の)二宮とは、二宮尊徳のことですが(中略)、薪を背負って仕事をしながら勉強をしている、つまり、一度に二つのことを同時進行して行う能力のことなのです。(中略)ビジネスにとって、大きな柱は大切です。しかし、1本の柱だけを頼ってはいけないのです。家を建てる時も、大黒柱はありますが、その周りには細かい柱がたくさんあるわけです。
この細かい柱を同時進行で作っていくことが、二宮力なのです。逆に言えば、この細い柱を作っていけない経営者は危険ともいえます。難しい言葉で言うなら、リスクヘッジ、すなわち、リスクの分散をしましょうと言うことです。(中略)僕も、アイス屋をしながら、コンサルティング業、メルマガスタンドの運営、ホームページ制作など、多角的に事業を展開するようになりました」
杉浦さんがご指摘しておられるように、事業の多角化でリスクを分散するということは大切な考え方だと、私も考えています。さらに、現在は、マネジメントの精度を高めるためにも、多角化の重要性は高まっていると、私は考えています。ちなみに、これは、「範囲の経済」とも言われています。ダスキンのミスタードーナツ(ミスド)への参入は、その例のひとつと言えます。同社がミスドに参入した理由は、より高度なフランチャイズシステムを学ぶためだそうです。
そして、創業者の鈴木清一さんは、1968年に米国に渡り、すでに米国でフランチャイズ展開していたミスタードーナツから、日本全国でフランチャイズ展開する権利を得たそうです。この事例は、事業規模としては大きなものですが、考え方は中小企業でもあてはまると思います。最近は、業績が振るわない会社が、まったく異なる業種の会社に事業を譲渡し、その会社によって事業を再生してもらうという事例は珍しくありません。というのも、21世紀は、業績が高まる要因は、事業そのものよりも、マネジメントの優劣で決まるからです。
したがって、ある事業がうまくいけば、そのマネジメントノウハウを駆使して、別の事業を展開することで、まったくゼロから起業した会社よりも有利に展開できることになります。もちろん、ダスキンのように、フランチャイズ契約をすることによって、迅速にノウハウを習得するということも効果の高い手法だと思います。このように、「二宮力」は、21世紀に向いた能力であると、私も考えています。
2023/8/30 No.2450
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