メリットとベネフィット
[要旨]
自社製品がなかなか売れなくて悩んでいる会社は、製品の性能などに目が行き、それが原因で製品が売れないと考えがちですが、現在は、顧客にとって製品で得られる恩恵であるベネフィットが重要な時代であり、自社製品の性能などよりも、どのようなベネフィットがあるかを顧客に伝えることが大切です。
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前回、ジャパネットたかた創業者の高田明さんは、顧客にベネフィットを伝えることで、メーカーがなかなか売ることができない製品を販売し、業績を伸ばしてきたということについて書きました。今回は、このベネフィットについて、私が考えていることについて述べたいと思います。まず、すでに多くの方がご存知とは思いますが、ベネフィットについて、念のために説明しておきます。
ベネフィットについては、「人々は、4分の1インチのドリルが欲しいのではなく、4分の1インチの穴が欲しいのだ」という格言で有名になりました。これは、ドイツ生まれの経済学者の、セオドア・レビットの著書、「マーケティング発想法」の中で紹介されたものです。すなわち、ドリルを買う人にとって、穴をあける手段を得ることが「メリット」、ドリルであいた穴が「ベネフィット」です。
高田さんの販売方法の例でいえば、大型液晶テレビを売るときは、「リビングに42インチのテレビがあれば、部屋に閉じこもってゲームをしていた子どもたちも、リビングに出て来て、家族といっしょに、迫力のあるサッカーの試合を見るようになりますよ」と伝えたそうです。この例では、「42インチの大きな画面のテレビ」が「メリット」で、「家族の団らん」がベネフィットです。
ところで、昨年は、コロナ禍で、日本の多くの会社が厳しい経営環境の中にさらされました。しかし、そのような中にあっても、業績を伸ばした会社も決して少なくありません。しかも、それらの会社の中には、販売する商品を変えずに業績を伸ばしている会社もあります。例えば、生鮮食品を販売しているスーパーマーケット、巣ごもり消費に応えたホームセンター、家族と家で楽しく過ごすためのボードゲームメーカーなどです。
もちろん、これらの業種は、会社に有利に経営環境が変わった面があるでしょう。でも、現在は、「メリット」よりも「ベネフィット」が重要な時代です。したがって、自社製品がなかなか売れないという課題を持っている会社は、まず、自社製品の「ベネフィット」を見つけることで、業績を改善できる機会にできると、私は考えています。