The Specification Exerciseを開発チームでやってみた話〜仕様を伝えるって難しい〜
Rettyでプロダクト部門担当役員をやっている野口です。
プロダクトマネージャー(PM)系勉強会にちらほら顔を出してインプットしておりますが、昨年PO祭り 2019 Autumnでやったワークショップに激刺さり。実際に開発チームでやってみたら、良きでしたという話です。
The Specification Exercise〜仕様を解釈する困難を実証するExercise
PO祭りにて、PO祭り主宰の関さんがファシリテート してくださった「The Specification Exercise」
ずばり、「完成図を見ることができないリモート環境の実装者に、テキスト記述だけで仕様を伝えるExercise」です。
James Shoreによって作成された、書かれた仕様を解釈しようとするときに遭遇する困難を実証するように設計された Exercise を体験いただきます。
この演習では、多くのポイントをうまく説明しています。
それは、「開発者」が文書化された仕様を理解することの難しさと、ビジョンを伝える際の言葉によるコミュニケーションの重要性を示しています。
また、「仕様作成者」と「開発者」が分かれている場合にチームが抱える困難のいくつかを示しています。
引用: https://postudy.doorkeeper.jp/events/96136
ぱっと見、簡単そうと思ったでしょ。これがめちゃくちゃ難しいんです。
PMやディレクターの基本スキルである、実装するエンジニアに決めた仕様を伝えるという仕事。
普段しっかり言語化して伝えられていると思っても、実はふわっとした口頭のニュアンスでごまかしていたり、エンジニアさんが汲み取ってくれていたり、、、そもそも実は伝わってない!?なんてことがあったりするのではないでしょうか。
改めて仕様を伝えるということの困難さが理解でき、そしてそれを乗り越えるために重要なことを学びとして得られるワークになります。
PO祭り当日、各社のつよつよPMの方々と一緒にワークを進めましたが、まぁずれるずれる。相手が理解してくれるのではと、いかに自分が他責した仕様伝達をしていたのか思い知らされました。とはいえ、皆さん2回目のタームでは相当修正されていて、流石でした。
なぜRettyでやってみたか
Retty開発チームはエンジニア・デザイナー・プロダクトマネージャー(プランナー)で50名程度。
毎年エンジニアが4名前後、PM・プランナーが2名程新卒で入社しており、中途でも他職種からPM・プランナーに転向したメンバーが何人かいます。
特に若手プランナーの中には、「どのくらいの粒度で仕様を伝えるべきなのか」、「なぜ自分の書いたissueがエンジニアに伝わらないかわからない」という声も多くありました。
若手向けのトレーニング・インプットとして、ロジカルシンキング講習をしたり、issueテンプレを作ったり、それ以外にも日頃からフィードバックを行ったりとやっていました。
ただやはり色々詰め込むよりも、そもそも仕様を伝える難しさや必要な要素を身を持って学ぶ方が早いなと。
このワークがまさに!!な内容だったので、昨年末実際に1時間程時間をとり、15人程でやってみました。
ワークの流れ〜仕様の口頭伝達は🆖〜
公式のドキュメントに倣ってやるのがベストですが、Rettyでは以下のようなやり方でやりました。基本的にPO祭りの関さんのやり方を踏襲しております。
①2〜3人1組でグループを作る。
できるだけエンジニア・PM・デザイナー混合だと望ましい。4人でもOK。
②仕様を書く人1名、図を描く=実装する人1〜3名に分かれる。仕様を書く人、実装する人各々に白紙を用意。白紙に書いていきます。
仕様を書く人が2名でも良いが、やや難易度が下がる。実装者に関しては2名だと実装者同士のコミュニケーションの難しさも体験でき、3名では難易度がやや下がる。
③図を完成させるまでの時間は12分間。
長そうですが、あっという間です。
④オリジナルの図は別室に用意。仕様を書く人だけが別室に見に行ける。仕様を書く人は白紙の紙に仕様をテキストでのみ記載できる。図を描くことも実装者に口頭でコミュニケーションを取ることも禁止。
話せないというのは難しいことなのです。仕様を書く人たち。
⑤仕様を書く人は仕様を書いたら、実装者のいる部屋に戻り、仕様を見せます。実装者同士は会話可能ですが、仕様を書く人とは話せません。
ここで「なぜ伝わらないんだあああああ」ってなります(笑)
⑥仕様を書く人は何回でも別室のオリジナルの図を見に行き、仕様を付け足すことができます。紙は何枚でも使えます。
開発でも最初の仕様で伝わらなければ何度も仕様を付け足したり、修正したりしますよね。仕様が誤解されていたら、何度も別室に走りましょう!
⑦12分経てば終了!各チームの完成図を壁に貼り出しましょう。一番オリジナルの図にそっくりだったものに投票していきます。
実際にRettyでやってみた完成図。
1周目。
2周目。
同じオリジナルの図なのに、異なる仕上がりになるのが不思議ですよね。
⑧1周すれば一度振り返りをして、次への改善点をチームで話し合います。2周目は仕様を書く人と実装者を入れ替えて行います。
2周+振り返りで45分〜1時間くらいになります。手を動かす時間が多いので、メリハリのあるトレーニングになるはずです(うまくできててすごい!)
以下はRettyでのワークで実際に使った図です。
あまりに複雑すぎたり、絵心が必要だと趣旨から離れてしまうので、図はn角形や星のような誰でもわかる普遍的な図形の組合せが良いですね。
2周目のワークで圧倒的に票が集まった図。そっくり!!!
やってみてどうだったか
普段の開発とは離れた状況で、自分の仕様の伝え方、ディレクションを見つめ直す機会を提供できたという意味で、非常に良かったですね。
ワーク後、Slackに各チームの学びを共有してもらいました。
全体像をまず伝える。間違っている箇所を特定し、すぐ修正する。丁寧すぎる言葉よりも、伝わる言葉を選ぶ。
皆各々学びがあったようです。実装される側の気持ちやどういう依頼のされ方が嬉しいかが、特に若手のプランナーはピンとこない部分もあったと思うので、ワークショップの形で経験させてあげられたのはポジティブでした。
成長していく上では知識も大事なのですが、身を持って失敗すること、それによりマインドが変わることが一番重要です。本番で体験する方が学びは深いですが、できるならこのように擬似的に体験しておけるとスムーズに事が運びそうです。
仕事の基本の「わかりやすく完成イメージを伝える」ことなので、営業や事務職でも使えそうです。
19新卒メンバーからは、新卒研修時にやりたかったという声も出ており、20新卒研修では導入研修として組み込む予定です。講師側としては、図を考える以外は一度やってしまえば、そこまで準備工数がかからないのも有難いですね。
過去、野口が書いたRettyの新卒研修に関する記事。
求む、プロダクトマネージャー
Rettyでは「食を通じて世界中の人々をHappyに。」するために、プロダクトを前進させられるプロダクトマネージャーを求めています。興味がある人は一緒に学びながら、課題を突破していきましょう。
またPO祭りは2/16に次回開催があるそうです。野口は参加できませんが、興味がある方はぜひ参加してみてください。