小説「メジャー・インフラトン」の描き始め(第1部作です。)その6
こんにちは。あおっちです。
いつも、フォローやスキをしていただきありがとうございます。
あおっちは台風10号が迷走して、交通機関がらみでちょっと困惑しています。今度は九州方面に向かているみたいですが、皆様は影響ありませんか?
数年前の大阪を襲った台風21号など2本の台風を思い出して準備をしましたが、どうなる事になるのやら。
「メジャー・インフラトン」のスピンオフシリーズ構成の詳細。
(その④)
④「ワルシャワの妃 小さな恋のストーリー」
「ワルシャワの妃 小さな恋のストーリー」は、元軍人の椎葉きよし20歳、天才少女シルビア12歳がワルシャワ大学へ2人で入学する時から始まる学園生活のストーリーです。
形式はポップノベルで、初挑戦のショートで行こうと思います。
【 登場人物 】
椎葉きよし
「メジャー・インフラトン」の主人公。昨年の苫小牧・千歳防衛戦で大けがをした退役軍人。
ようやく五体満足になったのですが、意識がなかなか戻らなかった。
ある日、母の椎葉京子の提案で、激戦地の千歳宙空ステーションに設置された戦没者慰霊碑へ参拝に行くことに。
そこで、慰霊碑に刻まれた自分の彼女「ジェシカ・L・D・G・スミス」や戦友たちの名前を見つける。
自分の鼻の上に落ちる一粒の雪。
その刺激から全てを思い出すきよしだった。
シルビアリーム・マゾフシェ・シーラス・マズル
12歳で、大学入学資格試験に受かった天才少女のシルビア。
母のオリエッタと共に、北海道の自宅で治療するきよしの寝ずの看病をすることになった。
意識の戻らないきよしを車イスに乗せて、毎日散歩や話しかけて介護する毎日。そして、ついにこの世に意識が帰ってきたのだ。
それから戦争の後遺症を避けるように、異国のポーランド留学を決めた。
そこから話が始まります。
新生活が始まる椎葉きよしとシルビアの微笑ましい物語を書こうかなぁと思いました。
本編では、「メジャー・インフラトン」と全く関係のない日常をコメディタッチで、ポップノベル形式で進めています。
2人はマズル家のあるトルンから通学します。
新たに出来た友人のジグムント・シオンと3人の面白大学生活が始まるのです。
まずは、きよしの一番苦手な漢字学習の授業が始まり、日本人の椎葉きよしが、ポーランド人のシルビアから、漢字のスパルタ学習が始まるのです。
第1部作テキスト、「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
ーー 前編のあらすじ ーー
収容所、女性ドクターのジェーンが、驚きの報告をするために所長のボイス大佐の事務所に訪れた。
その報告書を読むボイス大佐。
なんと、捕虜の日本兵がたった1日で数針縫った、ひたいの傷が跡形もなく治癒していたのだ。その報告に驚くボイス大佐。
それと同時に、机から直ぐ取り出せれるように、ピストルを用意したのだ。
第2章 アメリカ陸軍、テキサス捕虜収容所。後編です。
大袈裟に手を広げるボイス大佐。
「無傷、完治。解る?ナッシング。次の日には傷跡もあなたが縫ったデタラメな縫い跡も無いのよ。縫った糸はどこにいったの!まったく。」
ボイス大佐は、唇を噛み締めて無音で、ゆったり回る天井のシーリングファンを見つめた。そして、イスから立ち上がり、外の収容所の様子を外窓のブラインドの隙間から見た。
そんな大佐を目で追いかける女軍医。
ボイス大佐は首を振りながらまた、笑いながら呆れて、しゃべり始めた。
「あー。彼には、……本当に。クレンショー伍長には済まない事をしたわ。あ~まさか、まさか……本当に有る事だなんて。」
ブラインドの外を見ながら腰に手を当て、下を向いて額に指を当て、独り言を言うボイス大佐。
「ハッ?何の事ですか、誰ですかクレンショー伍長って?あまりに酷い縫い方でその伍長が治してくれたの?翌日には完治だなんて!凄い方です。魔法かしら。どうやったら翌日に完治するの?もう、そのような治療薬が開発されているのでしょうか?もしそうでしたら、私のレポート撤回します。テキサスの収容所に配属されて、頭がイカレタと思われます。」
レポートを返せとばかりに手を差し出す女軍医を、大佐はまぁまぁと女軍医を手で押さえた。
また机の上に置かれた診断書の患者の名前とレポートの患者の名前を両方を、指で差した。
「ただ、診断書の捕虜の名前はグンソー・フクダ。レポートと名前が違うじゃない?ね?これよ。」
「それは、ここ収容所での名前は、偽名です。本名はヒロシ・ミフネです。」
「ん?何故、偽名とわかるの?」
「昨日、本人と、他の日本兵にも聞きました。」
大佐が再び椅子に座り、両手を組んだ。
「ふふふっ。いつも転任したての軍医、特に白人の女医はアジア人をものすごく嫌がるけど……気味が悪いって。戦時中のプロパガンダのせいだとは思うけど。黄色いサルは知能が低いって。新聞で、日本兵の頭蓋骨を本土まで送ってきた記事とか、アナタ見なかった?写真付きでよ。プロパガンダの極みよ。ほんと恥知らずの記事。どう?」
「え?そうですか。ヨーロッパに居たので、よく知りません。」
「まぁでも、よく貴女は自分から近くまで行けたわね。まだ、転属して5日目でしょう?彼らは、何と?アナタは日本兵と話をしたの?」
と、ボイス大佐。
「イエスマム。通訳を通してですが、彼らはミフネの事を不死身の分隊長、鬼の分隊長とか。」
大佐は聞き間違えたか?との表情で耳たぶに指を当て聞き直した。
「不死身?何ですって?」
「そう不死身の、死なないの意味の。ここ、テキサスに回されたアンガウル・ペリュリューでの生き残り8人全員が同じ事を言います。本人にも会って名前を確認しました。ヒロシ・ミフネで間違いないと。アンガウルでは戦死した戦友の名前で戦っていたと。それで昨晩、レポートの名前をすぐに本名に書き直しました。」
私も呆れたと、両手を開きゼスチャーをしながら女軍医は話し続けた。
再び立ち上がりガラスの壁に立ち、腕組みをする大佐。構わず話を続ける女軍医。
「たまたま、昨日の昼。ワシントンから検閲にいらっしゃった軍医殿、医療部長の、元空挺部隊で従軍医師の少佐と昼食をご一緒しましたの。」
ガラス壁のブラインドの前に立つ大佐が、突然!振り向き鋭い眼光を女軍医に向けた。
「ん?あー!元ワイルドキャッツ、第八十一歩兵師団の従軍外科部長の?マイケル・マズル少佐の事か!」
突然、強い態度になる大佐。
少し驚く女軍医だった。しかし、気の強い女軍医。
彼女も負けずに返した。
「そうです!そのマズル少佐ですわ。」
少し興奮気味の軍医。
「パラオのペリュリュー島は、星条旗の旗揚写真で有名となった硫黄島に次いで、激戦地として有名になりましたが、隣の島、アンガウルは米国にとって更に最悪だったそうです。1,259名の日本兵に対し上陸した約21,000名のアメリカ兵の戦い。アメリカの戦死傷者は2,559名。軍の機密事項ですよね。」
と、下を向く女軍医。
「私も聞き知ってはいるが。」
ボイス大佐は下を見ながら話を続ける女軍医の目線を確かめて、ガラス壁のブラインドを全て外から見えないように、静かに締めた。
( シャカシャカシャカ……。 )
「マズル軍医殿と私は2人ともポーランド人で、話が盛り上がってしまって。誠実でユーモアがあるお方で、」
話が脱線しそうになり、大佐の視線を感じて赤くなる女軍医。
「ゴホンッ!失礼しました。ただ、お話の中で、信じられませんでしたが、」
大佐の顔を見て、人差し指を上げ興奮気味に話続ける。
「たった1人。たった1人ですよ。大佐。1人の日本人に200名以上の兵士がやられたと。もしかしたら間接的には、300名以上のアメリカ兵がやられたかもと仰ってました。」
「えっ?1人の兵士で、そんなバカな。ふふっ。」
「いえ、事実みたいです。私も疑って話を聞いたのです。でも、アンガウル、ペリュリューで味方の遺体を検死したのも、重症者を治療したのもマズル少佐ですので間違い無いと。負傷者、戦闘による死亡者の検死・統計報告はマズル少佐との事でした。」
「あははっ。そんな、1人の兵士でそんなに味方の負傷者が出るなんて。世間に知れたら、大変な事になる。戦時国債が暴落するわ。ふふふっ。」
半分、バカにしながら上目使いで女軍医をみるボイス大佐。
そんな、態度に構わず話を進めた。
「はい、マム。たとえば、日本兵が占拠した洞窟の前で、すでに日本兵は一掃されたと油断した米軍が、生き残りのそれも、たった1人の日本兵と戦闘になり見方が大勢やられたと。その時、敵の、その日本兵も重傷を負ったハズなのに、翌日また同じ日本兵に中隊が襲われて全滅したと聞きました。その中隊長の、テイラー少尉。いえテイラー大尉が自由ポーランド軍の降下部隊でご一緒だったので間違いないと。」
少し高揚しながら話す女軍医。
ボイス大佐が、腕を組みながら自分の机に腰を掛けた。
「なるほど。あなたはその話、少年の妄想みたい話を信じるの?無敵の兵隊だなんて。サムライは無敵みたいな。はははっ。全く。あり得ない、あり得ない。そんな話を。今、GHQのマッカーサー元帥の日本占領が始まったのよ。そのサムライの地、日本の占領が始まった時に。あははっ。もう、日本に上陸した兵士が間に受けたら、パニックになるわ。あははっ。」
「はい。話の序盤ではありえない作り話と思って聞いていましたが……マム、」
「聞いていましたが、って何?」
「はい、日本軍との戦闘に決着がつき、アンガウル・ペリュリューでの占領も終わり、本格的にペリュリュー島で空港の建設が始まった時、それが始まったと。」
「えっ?なにが始まった?」
眉にシワを寄せ、思わず本職の記者に戻り、メモ用紙とペンを用意するボイス大佐。
「それが大佐。毎晩、恐怖の爆発事件が多発したらしいのです。」
「そんな作り話。ペリュリューや東南アジア方面から戻った、私の通信社の従軍記者からも聞いてないわ。爆発事件って、初耳よ。クレンショー伍長も爆発事件は言ってなかった。」
「そうですか。それも死んだはずの日本兵、そのサムライが何度も行っていたらしいのです。最初の出会いはアンガウル。重症の彼を治療したらしいのです。でも翌日は脱走したと。」
「死んでから翌日って。そんな。」
「私も疑いましたが全身、創傷や銃創が多数で、撃たれた後なのに。翌日から脱走したらしいのです。」
「……馬鹿馬鹿しい。それで?」
つい、馬鹿馬鹿しくなり、ペンを収めたボイス大佐。
「はい。そして、2回目に彼と出会ったのはペリュリューの本部キャンプとの事です。」
納得いかない顔のボイス大佐。眉の上を指で掻いた。
「その時は頸部、首を撃たれ銃殺されたらしいのですが、遺体で運ばれてきたと。その遺体を、マズル軍医殿が戦死判定を出したと言っておられました。それなのに遺体置き場に3日間放置していたら突然いなくなったと。」
「は?何っ?そんな馬鹿な!」
「戦場を渡り歩いたベテランの医師が死亡を確認したんですよ。その遺体が遺体置き場から行方不明に。捜索したその夜、燃料倉庫や弾薬置き場を爆破されたらしいのです。」
鼻で笑いながら話すボイス大佐。
「はははっ。もう、ありえるの?そんな作り話。いい加減な。マズル少尉ってそんな人だったの。」
「いいえ、マム。彼はまじめな方です。そのマズル少佐殿が、間違いなく仰っていました。」
「たしかに、私の取材したクレンショー伍長は確かに、グンソー・フクダは傷の治りが早く、すぐ傷が治ると脱走しそうになるので、体当たりして止めた事があったとは言っていたのよ。」
「でも、そのグンソー・フクダがここに居るのです、マム。」
「わかっているわ。でも爆破事件までは聞いてないな。ん~まぁ、軍の機密に関わるのかな。驚異の回復力か。でも、あなたのお父様が作る映画じゃないのだし。」
「あっ、父をご存じで?」
「あなたのお父様、敏腕プロデューサー、ゴールドウィン監督は全米の皆が知ってるわよ。」
「ありがとうございます。それで、その軍医の話から私が興味を持ち、グンソー・フクダと呼ばれる日本兵。そのサムライに興味が沸いて、今日の朝に彼を呼び出して検査をしたらなんと、回復している……本当なんです。」
話の途中、ボイス大佐は突然、サッ机に戻り引き出しの銀のガバメント銃をとった。
あろう事に女軍医の目の前を、片腕で机を押えて机の奥から忍者のように1回転し、着地した。
( シュ、シュ、タンッ!)
部屋の中で何が起きたのかわからない女軍医。
棒立ちになったままだった。
その棒立ちのまま立ち止まった軍医のこめかみへ、ボイス大佐が腕をまっすぐ伸ばし銃を突き付けて横に立ったのだ。
一瞬の出来事に、両手を顔の前にパっと開いたまま、固まる女軍医のジェーン・ゴールドウィンだった。
次回、「第3章 発見、ゼロ・スターター。」こうご期待。
さぁて、ウチの地域🐈猫🐈にエサもあげたし、そろそろ転がります。
今日は、ようやく奥歯の抜歯も無事に終わり、腑抜けになってお休みしますね。
スキなんか頂けたらあおっちの励みになります。
よろしくお願いいたします。
それでは、お休みなさい。
あおっち