厚生・労働の統合を評価――樽見新事務次官|迷想日誌
このほど、厚生労働省の樽見英樹新事務次官が会見に応じてくれましたので、概略をご紹介します。
最近、政界などで議論になりつつある厚労省分割論について話していました。
樽見次官は、直前まで内閣官房で6カ月間にわたりコロナ対策を続けてきた後に厚労省に戻ってきたため、その分野の広さに改めて戸惑っている様子です。旧厚生省入省の樽見次官が、ややこしい労働分野の詳細まで理解できるとすれば神業です。
そこで、厚労省分割論が出てきます。
本来、厚生・労働の統一はすべきではなかったと考えられ、できれば再分割が好ましいといえます。
なにしろ、分野が広いこと、巨大な予算となっていることが挙げられます。
そして、実際にもこれまで法令作成の誤りなど単純ミスがめだち、野党から散々追及されていました。
労働分野は独立した労働省として、政策を専門的に企画・立案していくのが、理想的です。
厚労省の新卒採用は、平成11年から統一的に実施されていますが、これにより従来のような労働分野の「専門家」が育成されにくくなっています。
もっとも、首相官邸や学者の指示通り政策を進めるのであれば、「素人」でも可能でしょうが、それで良いとは思えません。
しかし、樽見次官は、分割を視野に入れていないようです。
合併したことによって、国民にとってはより良い政策を作れる可能性が広がったと話しました。
つまり、縦割りを排除し、厚生・労働の双方の良いところを糾合することができるとみているようです。
たとえば、障害者対策にしても、厚生では福祉的対応しか考えられないですが、労働政策を視野に入れれば仕事に就いてもらうことを重点にできます。
仕事を与えられれば、人間としての尊厳を支えることができるとの見方です。
そして、「厚生・労働が一緒になって良かった。合併したことで得たものは、非常に大きい」と漏らしました。
ただ、大臣の国会答弁などでは、分野が広く大変であることに間違いはないとしています。
この負担をどのように軽減させていくかは重要ですが、それがすぐに再分割につながらないとしています。
今後、分割派との間で議論が続くことになるでしょう。
労働新聞編集長 箱田 尊文
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