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コロナ禍でのテレワーク|ちょっと言わせて

コロナ禍で突如、普及した印象があるテレワークですが、自粛要請や将来への不安、慣れないライフスタイルを強いられる状況で始まったこともあり、スムーズに導入が行われたわけではありません。
特集2に寄稿いただいた法政大学の廣川進教授によると、
災害心理学では被災者の心の経過が4段階で進行するとしており、見事に言い当てています。
廣川教授は「茫然自失期」「ハネムーン期」「幻滅期」「再建期」の順で心の変化を解説しています。

思えば、テレワークが始まったころは、依然として社会の理解が乏しかったような気がします。
会社では作業時でのルールが決められているものの、同時に家庭でも決め事をつくる必要が見過ごされていました。
細かいことでいえば、家にいるからと家人に用事を頼まれ、イライラが募ったという経験を持つ人も少なくないでしょう。
ストレスが溜まっているなかで、家族と一緒の時間が長くなり、D∨や虐待が増えたという報道も見られました。
このほか、自宅でのワークスペース確保などさまざまな問題が浮き彫りになりました。
何事も黎明期は混乱や試行錯誤がつきものといえます。

テレワークの作業に見通しが立つようになると、「ハネムーン期」を感じるようになります。
もっとも順応性の高い人や比較的一人暮らしの人は、最初からハネムーン期を感じていたと思いますが、やはり周囲の反応も含め、慣れるまでは落ち着かないものです。
首都圏の平均通勤時間は片道1時間。約2時間も自分の時間に当てられれば、心に余裕が生まれます。
電話をとることもなく、誰も話しかけてこない状況に仕事の捗りを感じた人も少なくないはずです。

弊誌が届く6月中旬ころは、廣川教授がいうように「幻滅期」あるいは「再建期」にあるのではないでしょうか。
月日が経つにつれ、課題が見えてくる時期といえます。とくにコミュニケーション不足は深刻です。
ちょっとした相談がし辛いのがテレワークの弱み。意外と雑談の中に仕事へのヒントや気付きがあるものなのです。
とりわけ、いまだに気を抜くことができない状態にあります。コミュニケーションが少ないと情報不足に陥り、今後の状況が不透明なだけに心に不安を抱えやすくなります。
同僚はどんな仕事の仕方をしているのか、上司ならば部下がきちんと仕事をしているのか、職場の人たちから取り残されていないか、不安に感じる人もいるでしょう。
このような一種の極限状態で意識的に「感情の共感」を得ることは、メンタルヘルスにとって重要であると廣川教授は指摘しています。

「再建期」では、テレワークに順応できた人(会社・組織)と上手くいかなかった人の格差が生まれ、新たな問題が出てくるでしょう。コロナ禍が過ぎてもテレワークは働き方のひとつとして定着しそうです。
ストレスのないテレワークへの模索はもう少し続くのではないでしょうか。

安全スタッフ編集長 高野健一

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