~激動の2020年を考える~(2)軌道修正に向かう?経済政策~|迷想日誌
2020年の大きな出来事として、政府の財政支出に対する考え方が変わりつつあることが指摘できます。
コロナ禍での失業抑制策として、財政出動を積極化せざるを得ない状態にあることは間違いありません。
財政支出の考え方が変わってきた最大の要因は、大量の国債を発行して中央銀行が買う方式なら、経済破綻しない、つまり国としてデフォルト(債務不履行)しないことがはっきりしてきたということです。
世界の先進各国は、今回のコロナ禍で、大量の国債発行を余儀なくされました。
国際金融システムの安定を維持するため設立され、70カ国を超える国の金融機関が参加している「国際金融協会」が11月18日に発表した世界全体の債務残高は、2020年末までに277兆ドル(約3京円)と、過去最高に達すると見込んでいます。
先進国の債務残高の国内総生産(GDP)比は10月までに432%となり、昨年末時点の380%から上昇しました。
そのなかで、IMFの統計では、日本の債務残高は266%、スーダン259%、ギリシャ205%などとなっています。
しかし、先進国がデフォルトしたというニュースは聞きません。
日本が最も先にデフォルトしなければなりませんが、10年国債の利率は0.025%程度で、価格が下落する気配すらありません。
菅政権のブレーンとなっている著名な経済学者も、ようやくこの状態を認め始めました。
「100兆円ぐらい国債発行しても日本は破綻しない」と発言しています(「朝まで生テレビ」)。
理屈は簡単です。自国通貨発行権を有している国は、自国通貨建て国債をいくら増発しても中央銀行による弁済が可能だからです。
目標インフレ率を設定しておいて、その目標を超えるまで国債増発が許されます。この貨幣論の考え方の正当性が、徐々に広まっています。
そうなると、財政のプライマリーバランス黒字化への努力はナンセンスです。
日本は、20年間にわたってナンセンスな財政主義に縛られ、消費税増税などを繰り返してきました。
世界的地位を大きく落としてきた要因です。
失業を防止し、雇用を守るには、今のところ国による財政出動が唯一の頼みです。
日本はデフォルトしないという、理論と現実を直視し、来年以降正しいマクロ経済政策に転換すべきです。
しかし、今年度第3次補正予算案のGDP押し上げ効果部分は20兆円弱との見方で、やはり規模が足りません。
労働新聞編集長 箱田 尊文
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