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認知度低い治療と仕事の両立ガイドライン|気ままに労働雑感
厚生労働省は、高齢者の就労増加などを背景に病気を抱える労働者が増加傾向にあることから、がんなど病気の治療と仕事の両立支援に向けた取組みを強化する方針です。
具体的には、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に基づく企業の取組みを促進するため、労働者が記載した勤務情報に基づいて主治医が就業上の意見を書き込む「治療と仕事の両立支援カード」の周知を強め、積極的な活用を促していく考えです。
さきごろ開かれた労働政策審議会の分科会で、方向性について大筋で了承を得ました。
同ガイドラインでは、両立支援を行う前の環境整備として、(1)事業者による基本方針表明と労働者への周知、(2)研修等による意識啓発、(3)相談窓口の明確化、(4)両立支援に関する制度・体制整備――を行うことが望ましいとしています。
そして、両立支援の望ましい流れとして、(1)労働者自身が、支援に必要な情報を収集して、事業者に提出、(2)事業者が、収集した情報を産業医等に提供し、就業継続の可否、就業上の措置、治療に対する配慮に関する意見を聴取、(3)事業者が、主治医・産業医等の意見を勘案して就業継続の可否を判断、(4)事業者が就業継続を可能と判断した場合、就業上の措置および治療に対する配慮の内容や治療内容を決定し、実施する――などを示しています。
昨年3月には、労働者による両立支援の申出から、主治医の意見の提出までの手続きが円滑に行われるよう、「治療と仕事の両立支援カード」を作成しています。
同カードは、労働者が主治医に自身の勤務情報を提供し、かつ、この情報に基づき、主治医が就業上の意見を示すための様式です。
主治医の意見が記入された同カードを労働者から受け取った企業において、両立支援プランを検討することになります。
ただ、労働政策研究・研修機構の企業調査(2024年3月公表)によると、「現時点では、同ガイドライン自体の認知度が高いとはいえない状況です。
同ガイドラインについて、内容まで知っていると回答した企業は、たとえば正社員1000人以上の企業で6割弱ですが、300~999人で3割、50~99人で1割と、中小企業ではあまり知られていません。
ガイドラインが浸透していない状況では、両立支援カードの活用もなかなか進まないと思われます。
厚労省においては、ガイドラインに基づく取組みを実践した中小企業などの好事例を収集し、ガイドラインとともに積極的に周知していくべきでしょう。
労働新聞編集長
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