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規制強化で「商機到来」?|「ちょっと言わせて」

いわゆる「安全帯」の構造規格などが変わり、今年8月2日以降は旧規格に基づいた製造が禁止、およそ2年半後の2022年1月2日以降は販売も使用も禁止されます。
法律上の名称も「墜落制止用器具」となりましたが、今までと同じように「安全帯」「一本つり胴ベルト型安全帯」「ハーネス型安全帯」などと現場で呼称する分には一向に差し支えありません。
諸外国およびISOの動向などを踏まえて全面的に規格が見直されたもので、今年1月25日付けの労働基準局長通達(基発0125第2号。HPにもあり)に詳細が記されています。

今後、新たな規格を満たした安全帯の購入や使用が現場サイドとしては必要になりますが、国の指導がとりわけ厳しい建設業の場合はすでに対応が進んでいるところも多く、古い規格の安全帯のままでは入場すらさせない大手元請けの現場も現れ始めたようです。
つい「建設業」を思い浮かべがちですが、新たな規格を備えた安全帯の使用が義務化される「5m以上」(建設業・それ以外は6.75m以上)の高さがある場所での作業は、造船や電力、化学プラント、伐木、ビルメンテナンス、航空機整備、外壁診断などの現場をはじめとしたその他の業種にもあり、新しい基準に沿った安全帯への買い換え需要が見込まれます。

ところが「安全帯メーカーの動きが鈍い」という話を耳にしました。規制強化で“商機到来”となるはずの業界なのになぜ?

関係者に言わせると、業界の古い体質が旧態依然として残っているのだとか。

「現状が維持できればいい」と考えている節が当の業界側にあるとみるもので、「規制強化を機に生産を拡大して商機を広げよう!」――そんな気概みたいなものを感じないと言います。
反面、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設関連投資が2018年にはすでにピークアウトしているとする観測もあり、安全帯の大量購入先である建設業それ自体が先細っていく流れを読んだ選択的行動という見方もあります。

そんな中、つい先日「会見」まで開いて同需要の取り込みを狙いだしたのが米国の化学メーカー「スリーエム」の日本法人スリーエムジャパン(株)。
一気に6種類の新規格に対応した安全帯の販売に乗り出したようです。

経済紙の報道によれば安いものなら3万1800円、最も高価なものになると10万6500円だそうです。
また、ほぼ同時期にミズノ(株)が販売している夏場対策用の「電動ファン付きウエア」との併用で作業の安全性が確保できる(併用の安全性が確認できていない製品同士だと双方の機能が十分に発揮されない)――そんな実証実験データも同社は発表(下の新着ニュース)しており、その意気込みがうかがえます。スリーエム(3M)といえば、「ポストイット」(付せん)で有名ですが、日本では「住友スリーエム」を名乗っていた時期もある商社の流れを汲む企業です。

他が及び腰の中で打って出るその姿は、その血筋がなせる業かもしれません。

中小企業や個人事業主にとっては一定の負担になるのは間違いありませんが、事業規模や業務の危険度など、一定要件を満たした事業者を対象に買い換え費用を補助する制度を建設業労働災害防止協会(建災防)が国(厚生労働省)に成り代わって始めていますから、使わない手はありません。

安全スタッフ編集長 福本晃士

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