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「実質無料」が不正受給に|気ままに労働雑感
東京労働局など5労働局はこのほど、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の不正受給に関与した定額制訓練の提供会社1社の社名を公表しました。労働局によると、同社は、申請事業主に対して営業協力費などの名目で訓練経費を補填する原資を交付することにより、実質的に事業主の自己負担なしで助成金を申請させるスキームを考案。自己負担なく訓練を受講できるうえに一定の利益が残ると事業主に説明し、虚偽の助成金支給申請書の作成を主導していました。
同スキームは、同社と申請事業主の間で訓練契約を締結したあと、事業主に同社の協力会社と役務提供契約を結ばせ、協力会社から営業協力費などの名目で訓練経費とほぼ同額を支払うといったものでした。
事業主は協力会社からの支払いを原資に同社への訓練経費を払ったあと、助成金の支給申請をしていました。
厚生労働省の雇用関係助成金支給要領では、助成金の支給要件として、事業主が訓練経費をすべて負担していることを挙げており、事業主以外の者が訓練経費の一部でも負担している場合については、その訓練経費の全額が経費助成の対象とは認められないとしています。
訓練経費を全額支払った後に、返金が行われる場合についても同様です。
さらに、今年11月に改訂された要領では、「申請事業主が、教育訓練機関または教育訓練機関に関連する者から実施済みの訓練に関する経費の全部または一部につき、事業主の負担額の実質的な減額となる金銭の支払い(訓練経費の返金を含む)を受けた場合などには、『訓練等に要した経費を支給申請までに申請事業主がすべて負担』したことにはならない」と明記しました。
その場合の訓練経費は支給対象経費に該当しないと指摘しています。訓練に付随して、教育訓練機関などと締結した契約に基づき金銭を受け取ったケースについても支給対象外であることを明確化しました。
教育訓練機関が不正受給を主導したような場合でも、申請事業主が不正受給に関与したことが明らかであれば、申請した事業主名も公表されることになります。労働者への教育訓練実施を検討している企業においては、「人材開発支援助成金などの活用で実質無料」を謳い文句とした教育訓練会社の提案には応じることがないよう、十分注意してもらいたいと思います。
労働新聞編集長
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