聴く人それぞれに全てを委ねる優しい音。 Heliosの名作『Caesura』がアナログ再発。
アンビエント、ポストクラシカル、そしてエレクトロニカ・シーンで長年活躍をし続けている音楽家Keith Kenniff。彼のプロジェクトの中でも特にエレクトロニカ〜ダウンテンポ色が強いHeliosの2008年発売作『Caesura』が2022年、500枚限定でアナログ再発しました。本作は、名盤『Yume』 (2015)も手がけたTaylor Deupreeがリマスタリングを行っている。
この作品は特に、太陽が沈んでいく夕方頃に聴くのがぴったりだと思う。電子楽器で、人の体温や高ぶる感情を表現できるなんて、なんとも不思議なジャンルだと思う。しかも、こんなに便利な"言葉"というツールを敢えて使わず音だけ表現力で作り上げる。ある意味聴く人に全てを委ねている音楽だとも思う。
まるで鉄道 の車窓から遠くの景色を眺めているようなイメージを切り取ったようなアートワーク。サウンドは、シルクのようになめらかなギターのサウンドに、ダイナミックなビートが混じり合う。そして幾重にも重ねられたライトなシンセサイザーが、頬を撫でる風のように優しく響き渡る。
私がHeliosの音楽を聴く時には、まずアルバムアートワークを眺めて、そこから目をつぶり音楽を聴き情景を膨らませる。聴く人の脳裏には、様々な情景が浮かぶ。それは、私とあなたで全く違うものだし、同じ情景なんて何一つ無い。心にそっと閉まっておいた数年前のことを思い出してしまうような、なまなましいものであったり、ふと懐かしいものであったりする。そこに共通しているのはHeliosの音楽だ、という事実だけ。アートワークの写真1枚からでも、その過去と未来を創造することができる。
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