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Stella Donnellyの新作レコード、もう聴いた?

こんにちは。Rodentia Collectiveです。
私がBlogを書いているということは、そうです。入荷があったのです。

と言っても新しく入荷したのは9/15時点で2タイトルですので再入荷の方がワンサカきたという状況です。それにしても本当にレコードが売れません。ディストロもうやめようかな、と嘆く毎日です。売上がゼロの毎日です。円安もそうですが、そもそも、趣味にかけるお金をみんながあまり使わなくなってきているということを肌で感じます。円安、物価高、低賃金、コロナ…。上げればキリがありませんが、毎日心の平穏を保つのがやっとという状況です。というのも、私自身も、”必要の無いものは買いたく無い”、”無駄な買い物はしたくない”、”冒険してして失敗するのが嫌だ”とか時々思うわけです。音楽なんてものは今、レコードなんて買わなくても聴けるし、サブスクでも聴ける。4000円もかけてレコード買う?と、書いていて非常に寂しい気持ちになっているわけです。

色々ありますけど、やっぱりこの作品は入れなきゃいけないねと思ったので入荷です。オーストラリアのSSW、Stella Donnellyの約3年半ぶりのセカンドアルバム。Secretly Canadianからのリリース。Stella Donnellyは、個人的にもすごく好きなアーティストなのだが、2019年のフジロック出演の際にSNSで多くの人が”かわいい”とだけツイートしていたのがめちゃくちゃ気になった。かわいいけど、分かるけど…歌詞というか、なにについて歌っているか(メッセージを発信しているかわかってんのかな?)という気持ちになっていたら、後日栗原葵さんによるインタビュー(記事はこちら)で似たようなことを本人にインタビューとしても聞いてくれていた。すごく大切なことが書いてあるので読んでみて欲しいです。↓スクショしておきました。

さて、この流れでレコードの話をしましょう。Stella Donnellyといえば、ユーモアやウィットを交えながら非常にセンシティヴな社会問題に切り込んでいったデビューEP『Thrush Metal』(2017)や『Beware Of The Dogs』(2019)が話題となった。

デビュー作『Thrush Metal』収録の「Boys Will Be Boys」は2017年の#MeToo運動が大きく広まった際に注目され、アンセム的な存在の1曲。

2022年、アメリカでは州の中絶禁止法措置を認める判決が下された。女性の…というか、自分の体の権利は誰にあるの?なんで自分の体の事を、自分で決められないんだ。多くの女性が、また、私たち日本の音楽リスナーにも馴染みのあるアーティストたちが、”My body, my choice”と声明を出しました。日本ではなくアメリカで起きたことだけど、絶対に無視できない事件(と言ってもいいよね)だった。この時に思い出したのがStellaのアルバムに収録されいる「Watching Telly」。中絶を経験したStella自身の体験と、2018年、ダブリンでの中絶合法化に関する投票日に偶然訪れたStellaがその光景を目の当たりにしたことがこの曲のテーマだそうだ。

そして2022年。彼女が世界に対して言いたいこと。思わず賛同したくなる歌詞。きっとまだまだあるだろう…。次はいったいどんな作品を作るのか?と気になって仕方がなかった。実は本アルバム制作までの3年の間に、なんと43曲も制作したそうでStella Donnellyはとんでもないアーティストだなと納得。43曲だよ?最高すぎでは。

1曲目の「Lungs」から、ぐーんと伸びやかに響くStellaらしい歌声と弾けるようなサウンドで幕を開ける。本作はほとんどがピアノが主体のアルバムとなっていることに気がつく。偶然見つけたyoutubeでのインタビューでは、音楽を表現する上で、”ピアノのほうがギターよりも感情を直接的に表現ができる”的なことを語っていた。(ギターは、ペダルを踏んだりエフェクトをかけられる等で、間接的になるということだろと思う) また、非常に内省的であることは、幼少期にもピアノを弾いていたことからの彼女のインナーチャイルドが呼び覚まされているからかもしれない。とはいえ、ギターが主体の「Medals」も、ピアノを弾くタッチのように丁寧なサウンドを聴かせる。

社会へと向けていた大きな声を、今こそ自分へと問いかけるような作品となっている。しかし、決してただの傍観者にならずこれまでのように家庭内虐待やメンタルヘルス、社会問題にも言及しつつ、だ。「Move Me」や「Underwater」ピアノの優しい旋律に重なる、心の底からの歌声も見事である。誰もが口ずさめるようなポップなサウンドや、サビのラインなんかはこれまでの彼女らしさがより光り、このアルバムが愛されるべきポイントでもある。これまでの作品同様、何度だって聴き込みたい。

ラストの「Cold」は別れた恋人へ書かれた曲だそうだが、どう考えてもそれだけの曲とは思えず、今のこの世界に対しても同じことを投げかけられるような曲だと解釈してみる。”You are not, big enough for my love!”この掛け声は、声に出して一緒に叫びたくなるフレーズだ。Stella Donnellyの作る音楽は、サウンドだけ聴くとすごく楽しいポップソングだったり、とてもコミカルなMVだったりする。だけど、その聴きやすさの中には目を背けたくなるような社会問題や彼女のトラウマ、そして私たちが無視するべきではないメッセージが隠されている。ビジュアルだけ見て可愛い!…それでもいいかもしれないが、大切にレコードを聴き込めば、それだけじゃない(個人的にはビジュアルだけしか見ないのは失礼だと感じる…)ということが分かるはず。

冒頭で、4000円かけてレコード買う?と少々煽り文句のようになってしまったが、このレコードはいくらだって買う価値がある。初期からのファンはもちろん、まだ彼女の音楽を聴いたことが無い人も是非聴いてみてください。11月には来日公演もあるそうで、私はもうチケット取りました。

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参考文献:
なぜアメリカ連邦最高裁は女性から中絶の権利を奪ったのか」https://www.businessinsider.jp/post-256805
[INTERVIEW] Stella Donnelly」http://monchicon.jugem.jp/?eid=2277

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