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僕の物 ショートショート#21

僕には彼女が居た。
彼女にはたくさん愛情を注いでいたのだが、
その想いは伝わりきらなかったようで、半年前に別れてしまった。
今日はふとその事を思い出して感傷に浸っていたところだ。
(…いつも2人で行ってたカフェに行こう。)
そう思い、導かれるようにカフェへ向かった。
するとそこに彼女…いや元カノがいた。
偶然なのに必然と思える、そんな瞬間だった。
相手も驚いた感じはしたが、すぐに状況を受け入れてる様子だった。
そして別の席に座ろうとしたのだが、彼女が
「ちょちょ!こっち座りなよ。」
と声をかけられた。
「君は変わらないね。」
僕は嬉しかった。
君が好きになってくれた僕のままという言葉に。
そんな言葉を言った君は…
変わっていた。
僕の好みにしていた髪型も。
僕がプレゼントしたブレスレットも。
いつも使っていた控えめな香りの香水も。
全てが変わっていた。
「何故変えたの?」
なんていう野暮な質問はしなかった。
いや、できなかった。
変わったことに理由があってほしくなかった。
僕達は静かな雰囲気のカフェの空気に飲まれ、
そのまま静かにいつもは飲まないコーヒーを
飲み干し、自分のお代だけ出してその場を
後にした。
さよなら、今までの"僕"。

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