〜を戻す 物語#7

私の店は"なんでも元に戻す"という評判を持つ
修理屋だ。
修理する物のジャンルは問わない。
鞄、ゲーム、家電品などなんでもOK。
ただ、うちの店で唯一取り扱わないものは
"革製品"だ。
なぜかって?理由を話そう


私はこの店を始める前、とある能力を
手に入れたのだ。
それは"戻す"能力だ。
最初は何のことかわからなかった。
だけど、使ってみるとわかった。
壊れた扇風機を元の位置に戻そうとして使った時その扇風機が治ったのだ。
それでその時は物を直す能力だと思っていた。
だからその能力を有意義に使おうと思い、なんでも修理屋を始めた。
それから数ヶ月後、町内でなんでもすぐに直してくれる修理屋があると噂が広まったぐらいの頃。
その時にあるお客さんが来た。
その人が持ってきたのは"皮"で作られた鞄だ。
「これの破けた皮を縫ってほしいのですが…」
「そんなのお安い御用です!縫い目なんて
残しませんよ!」
そしてその鞄を受け取った。
なにか異臭がしたような気もしたが、その時は
気にしなかった。
その鞄に能力を使おうとした時に頭によぎった。
(この鞄って革製品だよな…元が生物なのに
大丈夫なのか?まぁいい。お客さんが待ってるし早くやろう。)
その能力を使った時、私は恐ろしい光景を見た。
革になる前…いや、"皮"になる前の者に"戻った"。
それに腰を抜かしたが、すぐに元に戻そうとしてもう一度能力を使った。
するとまた鞄に戻った。
僕はなにもみなかったフリをしてその皮を縫い合わして返した。
「す、すまない…縫い目が残ってしまったよ…」
「いや、いいんだ…こっちの方がいい。」
そう言ってヤツは帰っていった。


それから僕は一切の革製品を取り扱っていない。
それでも修理屋は続けている。
これからも続ける。
何十年、何百年と。
僕は"今の僕"に戻り続けてこの店を続ける。


あとがき

今回は異能力を題材に書いてみました。
こう…なんというか自分の能力がはっきりとしない感じが好きなんですよねぇ…
解釈が違うというか…
てか久々に長めに書いたかも。

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