0センチ ショートショート#32

いつだって言えたはず。
口に出せばすぐに伝わる距離だった。
なのに言わなかった。
伝わってると思い込んでいた。
そしてその時には思いつきもしなかった。
近くにいるときにはわからないのに、
いなくなってからのほうが溢れてくる。
「また会いたい。」
その呟きは部屋の隅に消えてった。
真冬の夜、僕は自分で注いだ温かい紅茶を
飲んでいた。
心はまだ冷たいまま。

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