ハナまであと半分
「ハナまであと半分」
その通りの場所に、その通りの名前の、小さな店があった。助かった。
ステイしているパイアからハナにドライブしてみよう、と、軽い気持ちで決めた。
ハワイ島よりぜんぜん小さな島マウイの、パイアからハナは、地図でパッと見る限りヒロからホノカアくらいの距離に見えるし、
なんなら今日はマウイ半周してしまおう、と。
それが甘かった、ということにうっすらと気づき始めたのは、ハナまでまだ道程三分の一ほどを過ぎたところからだった。
コストを抑えたレンタカーを借りたのだけれど、スペック的に、ローギアからハイギアになかなか入りづらいものであった。
なめらかなハイギアに入るためには、一度直線などをガーッと走ってエンジンを六千回転ほどにさせる必要があるのだが、
そのころからのハナへの道は、こまかに曲がりくねった、ワインディング・ロード。一度停止近くに落としてしまうとローに入り、
直線がないのでローのままで走ることになる。どうにかこうにかハイに入れたとしても、しばしばと一台しか通行できない橋が現れて停止を余儀なくされる。
山道のようなアップダウンがあるからローでもいいと言えばいいのだけれど、なにしろガソリンの減りが早い。電波もいまいちだから、自分の位置もわからない。しかも、ハナであれこれ食べたくなるかもしれないから、と、バナナしか食べてこなかったため自分自身のガソリンも枯渇状態。
次の給油は、どこだ。
泣きっ面に蜂、ということばは良く出来ていると思う。
とあるワインディングを注意深く曲がったら、車の列ができてる。なんだろう?あれ、道、封鎖?
人間、逆境時には連帯感が増すのか、前の車から外に出て、ブラブラとしている人が丁寧に教えてくれた。
「工事で、三十分後に開通するって。」
オー・マイ・グッドネス。教えてくれてありがとう、待つしかないね。
エンジンを切り、シートを倒して、半ばホッとした気持ちで休憩する。その時、下腹部に、うっすらとしたエマージェンシーを感じる。
次の排水地は、どこだ。
工事が終了し、給油と排水という二つの課題を抱えたまま、
景色を楽しむ余裕も欠き気味でひた走る。
そんな時だ。
目に鮮やかな看板、人の気配、駐車場、簡易トイレ、売店!
無事二つの課題の一つをクリアし、ホッとして売店に行ったら
いつもならきっと食べないようなおいしそうな焼き菓子が
目に入った。
小さめスマホほどの大きさで、6枚切り食パンくらいの厚さ、
マカダミアやクルミがゴロゴロぎっしり乗った、チャンキーで
見るからにハイカロリーなおいしそうなやつ。
買うでしょ、こんなとき。
自分の給油は、完璧に終えた。甘いもの食べると人は余裕が出る。
さぁ、ハナに向けて再出発。