40~50代のおじさん&おばさんにも聴いてほしい新世代ロック②
このテーマでは、最近元気を取り戻しつつあるロックの中で、「80~90年代のロックは未だに愛聴しているけど、若いアーティストの事はまったく分からん」というような40-~50代のおじさん&おばさんにもお勧めしたい、新世代のロックを紹介してみたいと思います。
ちなみに前回の記事では、2組のバンドをご紹介しました。
今回紹介したいのは、ソロ・アーティスト、デイヴィッドです。
我々おじさん&おばさん世代は、「デイヴィッド」という響きを聞くと反射的にボウイかシルヴィアンが想起されますが、もちろん全くの別人です。
なんと今年18歳になったばかりのまさに新生代アーティスト。英語表記ではd4vdと、略称といいますか当て字が正式なアーティスト名になるようです。
彼について特筆すべきは、音楽を制作するにいたった経緯です。元々は人気ゲームの実況動画を投稿するという活動を行っていたそうです。その動画に有名アーティストの音楽を使用していたところ著作権の問題で使用できなくなり、「それなら自前で作ってしまおう」と、iPhoneのアプリのみを使って、なんと妹のクローゼットの中でオリジナル曲を録音。それを動画と一緒に投稿したところ、どんどんと評判になり、Spotify等のサブスクで配信されるまでに。22年発表の「Romantic Homicide」という曲は、米ビルボードトップ100に初登場でランクインしており、Spotifyのチャートでも日本を含む世界各地で1位を記録しています。
日本でも岡崎体育のように自宅の子供の頃から使っていた部屋で音楽を制作して世に出たアーティストがいますので、特に珍しい話ではない事は頭では理解しているものの、それでもやはり我々おじさん&おばさん世代にとっては「スマホ1つでクローゼットの中でろくおん…」と、ちょっと感覚が付いていけないところはあります。
ただ、音楽そのものはメロディアスかつポップで、とてもスマホ1つで制作されたとは思えない程、表現力が豊かで親しみやすい楽曲ばかりです。
今年7月に発表された「Petals to Thorns」というアルバムは、彼がこれまで発表した主要曲が収められたファースト・アルバムです。この作品が導入編としては最適かと思います。美しいバラードだけでなく、60’sポップスぽい曲もあれば、UKポップぽい曲もあり、意外とバラエティに富んでいます。
40~50代のおじさん&おばさんにも伝わりやすい例えがなかなか浮かばないのですが、なんとなく思い出したのはテレンス・トレント・ダービー(Terence Trent D'Arby)です。テレンスのようにとっつきにくいわけでも気難しい音楽でもないのですが、「振り幅広めのメロディ・メーカー」という感じが、少し通じるところがあるような気がしました。
※ちなみにご存じない方のために、こちらがテレンス・トレント・ダービーです。とても懐かしいと感じる方も多いのではないでしょうか。
デイヴィッドについては、まだアルバム1枚を発表したばかりですので、課題といってよいのか分かりませんが少し物足りない面もあります。スマホのみで制作しているが故なのでしょうが、音の質感が少し平板といいますか、奥行きに欠ける印象は受けました。ただ、彼が今後も音楽制作を続けていくのであれば、もしかすると将来的にミュージシャンやオーケストラを起用したりする可能性もあるでしょうし、もしそうなると彼の作品はまったく別の印象をもたらしてくれるような気がしています。
(終わり)
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