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Paul Rodgers - Midnight Rose (2023)
全8曲33分と70年代のアルバムのようなコンパクトさが実に聴きやすいポール・ロジャースの2023年リリース「Midnight Rose」となるが、既に73歳となった歌声は意外な事に昔のままで聴いていると、いつの時代にトリップしているのかと疑ってしまうほどのレベルのアルバム。楽曲にしても完全に70年代のバドカンを彷彿させる快活なナンバーやブルースベースの渋みのある作品ばかりで、気になるギターも明らかにその筋のブルースギターベース、またはミック・ラルフス系をイメージした音色とフレージングばかりでもしかしたらポール・ロジャース自身も弾いているのかもしれない。まさかまさかのこの時代にこんな最新の音色による70年代作風のポール・ロジャースアルバムを聴けるとは思いもしなかったが、その辺のアルバムとつなげて聴いてても、もしくはミックスしてシャッフルで聴いていてもちょっと聴き慣れない曲だな、程度にしか違いを感じられない作風は良くも悪くも往年の定番風味わい。
いやはやホント、歌が上手い。この歳でも存分に声が出ているからこそこんなアルバムを作ってみたのだろうし、一回りも二回りも時代を超えてしまった今、古さすら新しく感じる再構築、本人は至ってそのままロックしてるだけと言う姿も分かるだけに奥深く聴ける。アルバムタイトルともなった「Midnight Rose」とはまたオシャレなセリフだが、楽曲ではアコースティック調に仕上げた雰囲気のある歌を聞かせるタイプの作風で、またじっくりと聴き込める魅力がポール・ロジャースらしい。ただ、改めて聞くとストリングスもピアノも美しく鳴っているので割と新境地とも言える作風にも思える、ここに来ての名曲讃歌。
更にパワフルな楽曲が立て続けに流されながらもスパニッシュ風味なイントロからの「Dance in the Sun」もなかなか魅力的な幅の広さで、歌声の幅広さを存分に聞かせてくれるが、後半はこの風潮の楽曲が多く、スティールギターやピアノなどロクからはちと離れたアレンジ風味が珍しさを増長させてくれる。ただ、どうしてもポール・ロジャースの歌声に耳が向いてしまうので違和感を感じないで聴いてしまうし、しっかりとロック調のアレンジにはなるのでごくごく自然体のロックスタンスが見事に調和しているバランスの良い作品で、もしかしたらこれまでのソロアルバムのどの作品よりも充実しているかもしれない出来映え。
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