Queen - Queen 1 (1973) Collector's Edition
1973年にリリースされたQueenのファーストアルバムが今この時期にまさかまさかの超拡張盤として再度リリースされるとは思わなかったが、62曲入りのボリュームで再登場してくれた。内訳はと言えば、当然のオリジナルアルバム収録曲の2024年バージョンミックスだけでなく、当初バンドが描いていたアルバムの選曲と曲順が反映されているようだ。もっともほとんど変わらないのでそこまで宣伝する効果もないとは思うが、それでも聴いていると案の定違和感を感じるのが「Great King Rat」終了後の「Mad The Swine」の流れだろうか、曲自体は1991年に発表されているのだが、ファーストアルバムに比べたら全然聴いていない楽曲なので馴染みが薄くてどうもしっくりこない。はたまた、こんな洗練された曲がこの時期に既に作られて録音されていたと言う事実もまたクィーンの偉業でもあるが、とにかく音像のクリアさや立体感がもの凄くて今時のアルバムかと勘違いするレベルまで徹底的にいじられている。
改めて素晴らしいアルバムだと実感するし、やはりカッコ良くもあり優美でもあり洗練されている異質なロックだったのだろうと思う作品だが、続いては何とトライデントスタジオではなくデレーンリースタジオでの本作のデモと称されているものの、当然デモテープではなく、バンドで録音した完全なるスタジオレコーディングバージョンなので、どの曲もどの曲も聴き応え満載で、全くオルタネイトバージョンと言える完全未発表のとんでもないリリース。それに加えてトライデントスタジオでのテイク違いによるスタジオバージョンもフレディや他のメンバーの会話と共に収録されているので、こちらもまたガイドボーカルバージョンと言いながら、これもう本番と大差ないだろってくらいの歌声だったりしてオルタネイトバージョンを存分に楽しめる。そこから派生したインストやバッキングトラックバージョンは自分でカラオケする場合に使うのだろうか、ないよりある方がそりゃ楽しめるが、フレディを楽しむには少々物足りなさを覚える収録かもしれない。
そしてBBCライブが続くものの、あちこちで発表されていた音源ばかりなので特別に目新しい感もなく、またその後に続くレインボウのライブも映像と共に丸ごとリリースされている音源だから、こちらもないよりはそりゃ楽しめるがここでまたファーストのアルバム準拠曲ばかりが抜粋版が収録されている。ただ、終盤になって1976年のサンディエゴのライブから「Hangman」と「Doing All Right」が入ってるのは面白い。そして本作最大の目玉、と言うかここで持ってくるかと思うくらいの意外な収録がバンド名をSmileからクイーンと改めてから多分2回目のライブとなった1970年8月23日のインペリアルカレッジでのライブから「Jesus」と「I’m A Man」と言うブルース曲が収録されているのが驚く。こうして聴くと1970年頃の英国と言えばもちろんブルースロックが全盛期で、クイーンもその波を受けてこんな楽曲を作ったり演奏したりしていたのかと、不思議にすら思う。言われてみれば結構ブルースリズムの曲もあるので、初期は特にそんな影響だったのかと分かるのだが、フレディの歌声と旋律とアレンジがブルースから完全に逸脱しているからもう全然そんな風に聴いていなかった。そしてここで聴ける演奏や歌も全然ブルースには聴こえないから面白く、それでも最初期のクイーンの演奏が当然時代に見合ったブートレッグ並みの音質で聴けるのか大変貴重。
そんなこんなで久々にクイーンを味わい、また久々にこれだけの楽曲を全て存分にバージョン違いまで楽しんだ愛すべき作品となった。
好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪