2010年代の洋楽ベストアルバム100を聞く ~4.Billie Eilish『When We All Fall Asleep Where Do We Go?』~
さて、ビリーアイリッシュである。予告編でもふれたように、この連載を始めようと思ったきっかけを作ったアーティストだ。
映画のエンドロールで、初めて『Bad Guy』を聞いた時、SoundHoundで曲名を調べてみたら、ビリーアイリッシュとありびっくりした。最近の洋楽に疎い私にさえその名前は聞こえて来ていた。「世界中のティーンから絶大な支持を集めるポップスター」として。ところが曲自体は聞いたことがなかったので、どんな曲うたう人だろうと思っていたら、これである。衝撃を受けた。ティーンエイジャーの女の子って、『ハンナモンタナ』とか、『ハイスクールミュージカル』みたいな明るく楽しい曲がすきじゃないの?そう思っていたからである。
でも、まだこの時は、「Bad Guy」が特別で他の曲は、王道ポップ路線じゃないかと思っていた。で、このアルバムを聴いてそうじゃないことを知るのである。
低音を強調した音数の少ないサウンド。朴訥として淡々と歌うボーカル。DTMで宅録したような仕上がり(ディスってません)。あとで調べたら最初は、兄と宅録した音源をサウンドクラウドにアップロードしたところから始まったみたいなので、あながち間違ってもいない。
こういう音楽、私は大好物なんだけど、昔なら、4AD とか el レコード とかのインディーズからアルバム出して、一部の好事家から大絶賛されるも、ネーションワイドな大ヒットというところまでには至らず、数年で忘れ去られてしまう。そういう類の音でしょ。どう考えても。(繰り返しになりますが、ディスってません。)
それが今や、世界のポップアイコンとして君臨しているのだから、世の中変わったなと思うしかない。背景として、ラジオからストリーミングへ、テレビからYouTube へ音楽の聴き方が変わったことが大きいのかもしれない。
このアルバム、日常の生活の中で、10代の女の子が感じている想いを、悲しさや、無力感とともに歌うコンセプトアルバムである。ビリーは決して歌唱力が高いわけではないが、曲の世界観にあった歌声で、聴き心地がいい。サウンドも、低音を駆使したミニマムで統一感のある構成にも関わらず、単調にならないメロディーラインのおかげで、飽きの来ないアルバムに仕上がっている。
心配なのは、有名になってきてこの先オーバープロデュースにならないかどうかである。米国という国は、女性シンガーが売れてくると、みな同じようないわゆる王道ポップサウンドに収束させてしまうようなところがあるので、それだけが心配だ。どうやら、しっかりと自分を持った人のようなので、大丈夫だとは思うが。
ダーク度 ★★★★
期待度 ★★★★★
総合評価 ★★★★★