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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第二十回】 ISO9001は組織の状況の理解をなぜ求める?


熊さん 「ゴキゲンさんです、大家さん。」

大家さん 「ああ、ご機嫌さん、熊さん。」

熊さん 「少し前によ、ISO9001の第1条を説明してくれて、買い手と約束したときに品物をちゃんと実現して届けるようにするための品質面のマネジメントシステムの能力があるって事を説明して買い手に理解してもらうってために必要な品質マネジメントシステムの原則をISO9001は書いているって説明してくれたよな?」

大家さん 「よく覚えているな、熊さん。ISO9001って品質管理の標準と思っている人もいるようだけど、品質管理っていやぁ実際にモノを作っているときの技術的な注意事項だけど、ISO9001は買い手から受注したときにそんな品質を実現するための企業の仕組みを作るための組織の枠組みの要求でな、取り組みの状況が全く違うンだ。

熊さん 「そうでヤンした。で、どれどれ、要求事項ってのは、このパソコンの画面の第4条からに書いてあるンでヤンスね?」

大家さん 「そうだよ。」

熊さん 「ン-と、第4条の『組織の状況』についてでヤンスが、これ、買い手が売り手の状況をよく考えろって事でヤンスか?そうだとすると、ISO9001は売り手に対して要求してるって大家さんの話と合わねえように感じるンでガスが。」

大家さん 「ウン、ISO9001は売り手に対して要求する事には間違いないがな、第4条は売り手の品質マネジメントシステムが要求してることではないンだよ。」

熊さん 「じゃぁどういうことでヤンス?」

大家さん 「エーとな、ちょっと6.1.1を見て欲しいんだけど、ここに『品質マネジメントシステムの計画を策定するとき,組織は,4.1 に規定する課題及び4.2 に規定する要求事項を考慮し,次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しなければならない。』って書いてあるだろう? 」

熊さん 「計画を策定って、なんか馬から落ちて落馬したってみたいですヤンスね。」

大家さん 「元のISOでは品質マネジメントシステムを作ろうと計画をするときは、っていう表現になってるから、単に『品質マネジメントシステムを計画しようとするとき』で良かったと思うよ、ワシはな。」

熊さん 「ヤッパリ!で、話を元に戻して、この言い方にじゃぁ、まだ品質マネジメントシステムができていない時に『リスクと機会』ってのを考えなきゃいけねぇ、『リスクと機会』を考えるためニャ4.1 と4.2 の要求事項を考慮しなけりゃいけねぇってなっていやすね。」

大家さん 「だから、第4条は売り手の品質マネジメントシステムに何を含めなきゃならないかと言うことではなく、品質マネジメントシステムを作る前にまず自分たちは何者かを分かっていなきゃならないよ、っと言っているんだよ。」

熊さん 「どこかで聞いたような物言いのようでゲスが・・・。」

大家さん 「昔の中国の孫子という兵法書に『彼を知り己を知れば百戦して殆うからず』というのがあることを言ってると思うけど、相手と自分の事をキチンと知った上で行動することがとっても大事だってことなんだよ。」

熊さん 「だから、品質マネジメントシステムを考えるんだったらその前にまず外部及び内部の課題を明確にしろ、って書いてるンでヤンスね。でもそんな品質マネジメントシステムに直接関係のないことをナンでわざわざ書いてるんですかねぇ?」

大家さん 「最初は入ってなかったのだけどな、標準を誤解してISO9001の要求事項をそのまま伝言ゲームみたいにして品質マネジメントシステムを作った企業がいて、役に立たない利用が多かったんだ。それで、2015年の標準見直し、改正の時に入れたんだそうだ。」

熊さん 「へぇー、そんな事情があったんですかぃ。」

大家さん 「小林化工って会社が飲む足の水虫薬に許容量を超える睡眠を誘う薬の成分を誤って配合し、死者1名を含む健康障害が発生したって話は前にしたよな。」

熊さん 「ああ、覚えてるよ。」

大家さん 「あの会社はISO9001を使ってたというわけではないがな、薬の事業は薬機法という法律で取り締まっているンだ。それで品質管理の基準に関してはISO9001を元にして作られたGQP省令って言われる規則に従うことになっているんだよ。」

熊さん 「小林化工は当然そのGQP省令ってのをよーく知ってなきゃなんねぃですね?」

大家さん 「だけど、事件が起こってからの顛末を見ると当初現場のケアレスミスにしたのは、会社としてGQP省令を外部からの課題の一つとして考えるどころか、ワシには軽視というか無視していたと思わざるを得なかったねぇ。まあ、GQP省令にISO9001の2015年改正をまだ取り込んでいなかったことは小林化工にとって不幸と言えば不幸だったけど、経営者としては当たり前のことだからねぇ。」

熊さん 「それで小林化工ってぇ会社が消滅しちゃったンでヤンスね。」

大家さん 「いずれにしろ経営者自身が自らの事業の本質を考えなくなった例だとワシは思うンだ。」

熊さん 「4.2に『利害関係者のニーズ及び期待の理解』ってぇ事が書いてありヤスが、この利害関係者ってぇのは買い手も含んでいるんですかぃ?」

大家さん 「いや、買い手の要求事項と関係する法令・規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する売り手の能力に影響するとなっているから、買い手以外の利害関係者だよ。」

熊さん 「例えば?」

大家さん 「それぞれの事業でいろいろあるから一概には言えないけど・・・。例えば親会社がある場合にそこから売り手の会社の品質マネジメントシステムに何らかの影響があるような規則があるような状況が考えられるよな。」

熊さん 「なるほど。決まったことではないから個々の企業で偉いさんが考えなきゃぁって事でヤンスね。」

 (次回に続く) 

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