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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第二十四回】 トップマネジメントと品質マネジメントシステムの原則文書-前編


熊さん 「チワ-大家さん。」

大家さん 「熊さんかい、今日は仕事が早く上がったようだね。」

熊さん 「そうなんでぇ。ちょうどいいンで、この前、ISO9001てぇの第5条でお出ましになるってぇトップマネジメントについて話してくれるって約束してくれやしたンで寄りやした。」

大家さん 「ああそうかい、じゃパソコンを持ってきて・・・JISCのホームページを立ち上げてと、ンー、ココだね。」

熊さん 「この第5条はリーダーシップってぇ標題になっていやすけど、トップのことナンでゲスよね?」

大家さん 「ああ、5.1.1でトップマネジメントに品質マネジメントシステムに関するリーダーシップとコミットメントを実証する事を要求しているからね、間違いないよ。」

熊さん 「いやね、現場のやる気をもり立てるためにエライさんがああだこうだ言いすぎない方が良いってのが日本の品質管理だって聞いたことがあるモンでヤスンでね。」

大家さん 「確かに企業自身の利益のためを考えりゃ、現場の自主性も大事な事だからそんなこともあるようだがな、買い手を考えりゃ、ウチは現場に任せています、っなんてことでお客さんが付いて来ると思うかぃ?」

熊さん 「アー、確かに不安になりやすいでヤンスなぁ!」

大家さん 「お客さんは企業を信用して契約しようとするんだから、信用を得ようと思うンだったらトップが約束をしないとハシゴを外された気持ちになってよそに行ってしまうよな。特に普段付き合いのない国際的な取引ではな。」

熊さん 「なるほど、少なくともお客さんと約束した事はトップがキチンと責任を持ってくれ、ってワケでガスな。でぇー、リーダーシップはまあ何とか分かりヤスが、コミットメントってぇのはなんでゲス?」

大家さん 「うん、リーダーシップってのはな、リーダーらしさを言っていてよ、リーダーの統率力がある事を言っているんだが、コミットメントは誓約と翻訳されることが多いけど、何かを行う事の誓約を意味しているのだよ。」

熊さん 「分かったけどよぅ、リーダーシップだぁ、コミットメントだぁ、って分けて考えられるモノでガンスか?」

大家さん 「いや、リーダーシップとコミットメントは組み合わせて一語みたいになっているようでな、品質マネジメントシステムに関してリーダーシップを執ってコミットメントを果たしている事をデモンストレーションしなけりゃならない、ってことを言っているんだよ。」

熊さん 「でも、アッシには漠然としていて何をしたらいいのか分かんねえや。」

大家さん 「いやいや、熊さんはトップの経験がまだないわけだし、第一そんなに慌てなくていいよ。ここに次の事項を示したら実証、つまりデモンストレーションが出来ると書いてあるよ。」

熊さん 「え?次の事項ってa)からj)の事でゲスか?慌てモノは損をみる、ってることですな、へへへ・・・。」

大家さん 「で、まずこのa)の品質マネジメントシステムの有効性にわざわざ元の言葉『(accountability)』を付けている説明責任を負う、ってことだがな、」

熊さん 「この文に何か重要なことがあるんでゲスか?」

大家さん 「ほら、前に第1条の説明をしたときに、顧客と適用される法令・規制の要求を満たした製品やサービスをいつも提供する能力をもっているってことを買い手に信用してもらうことがISO9001の目的だ、って言ったよな。」

熊さん 「そういや、思いだしやした!」

大家さん 「だからな、この有効性ってのは、品質マネジメントシステムはそんな能力の説明として有効な性格を持っているってぇことで、それをトップマネジメントがデモンストレーションしなきゃぁならないと言ってるんだ。」

熊さん 「それって要求事項のいちばん大事な事になるンじゃござんせんか?」

大家さん 「ウン、ワシもそう思うな。だから、b)以下はそのための条件になると思うよ。」

熊さん 「ところで、説明責任って何か不都合なことが起こったら、申し訳ありません、ってトップが謝ることを言ってるンでゲスか?」

大家さん 「品質不祥事があったらメディアが企業の責任を追及することがよくあって、社長出てこい、なんて社長の説明と謝罪を求めることがあるよな。」

熊さん 「この間もどこぞの社長がテレビで、申し訳ありませんでした何てぇ頭を深々と下げていたのを見やしたなぁ。」

大家さん 「アレを説明責任の追求と考えることが多いけどな、アレは約束した責任事項、responsibilityに関して実際に起こった違反についての事実関係の説明の事だよ。だけど、ISO9001が扱っているのは買い手が購入を決定する前の段階で、発注があればこうして目的の品質を実現します、ってぇ将来の時点の事を説明をする、英語で言えばアカウント、accountをすることが必要なので、アカウンタビリティ、accountabilityっていう言葉が使われ、説明責任って翻訳がされているワケなんだよ。」

熊さん 「ややこしいな、日本語では説明責任に起こったことの事実関係の説明と、将来こうしますという約束関係の説明の二つの違った意味があるって!それで翻訳にわざわざaccountabilityって原語を付けたことが腑に落ちヤシた。」

大家さん 「それで、買い手に対する説明責任、つまりaccountabilityは担当者じゃぁない、トップにある、って言っているんだ。日本の品質管理では従来は実務者の責任に注目されていたけどな、それは企業の内部のことで、買い手に対しては参考になっても責任ある説明としては通用しないんだ。」


熊さん 「だけど、有効性に責任を持つって口で言ってみてもそう簡単に信用してもらえないンじゃござんせんか。」


大家さん 「そうだな、それで作り手の品質マネジメントシステムの原則を書いた文書を作成して買い手に見せることが有効で、その原則をISO9001の趣旨に合うように作れば信用されるのも容易になるってワケだ。」

熊さん 「品質不祥事がしょっちゅう起こるってぇのはマネジメントの責任が大きいって前に大家さんが言ってたことを思い出しヤス。」

 (次回に続く) 

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