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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第三十四回】  運用とは全体の作戦計画-前編


熊さん 「チワ-大家さん、またISO9001の話しを聞きにきやした。」

大家さん 「ああ熊さん、第8条の話しをする約束をしていたね。それじゃパソコンを用意して、っと。」

熊さん 「ちょっくら失礼させてもらって、エーと、これを見ると第8条の標題は運用ってなってヤスけど・・・、なんか持ってるお金か何かをうまく働かせて使うんでガスか?」

大家さん 「いやいや、資金の運用ってよく言うけどな、これはカネなんかとは関係なくって原文ではオペレーションと言っている訳語なんだ。」

熊さん 「オペレーションっていや実際の作業の事を言うようでヤスが?」

大家さん 「そうじゃなくってな、オペレーションってのはもとは軍隊で使われてる言葉なんだ、軍隊では戦略計画に基づいて司令部が作る各部隊の作戦計画を指しているんだ。」

熊さん 「ということは、各部隊が自分で行動計画を作るってことじゃぁなくって、司令部が各部隊をどう動かすか決めるってぇことに意味があるんでヤンスね。」

大家さん 「そうなんだ。だから、第6条で買い手の品質要求と関係する法令・規制要求を実現するに際してのリスクと機会への取り組みのために決定したプロセスに取り組むための役割を果たすために、実行の作戦を定めることをこの第8条で要求しているってワケなんだ。」

熊さん 「それで、運用の計画と管理が8.1に書いてあるって事でガスか。」

大家さん 「ウン、第8条全面の共通的要求事項を書いてるようだから7.1.1みたいに一般って標題にしても良かったんじゃないかと思うけどな、一般、って書くと注目されなくなることを心配して、今の標題にしたんだろうと思うよ。」

熊さん 「この8.1はずいぶんとダラダラいろんな事を書いてヤスねぇ。目がチラチラして読むのがいやんなっちまうンでヤンス。」

大家さん 「そうだな、アレ?この8.1の最初の文の訳はチョット分かり難いことになっているみたいだな。『次に示す事項の実施によって』、って文が『計画し,実施し,かつ,管理しなければならない』って文に繋がっているように見えるんで、8.1の要求の対象になっていると思うかも知れないがな、」

熊さん 「ちがうんでガスか?」

大家さん 「JISの翻訳文じゃあ『次に示す事項の実施によって』がどこに続くかよく分からないけどな、英語の本文をよく見るとな、『組織は,製品及びサービスの提供に関する要求事項を満たし,及び箇条6 で決定した取組みを実施することのための必要なプロセスを,次に示す事項の実施によって,計画し,実施し,かつ,管理しなければならない』って意味のことになるんだ。」

熊さん 「てぇことは、8.1が直接要求していることはプロセスを計画し、実行に移し、管理する、ってぇことで、a)以下の事はそのために何をしなけりゃならないかを説明していてるってワケですカイ?」

大家さん 「そうなんだな、必要なプロセスだけではよく分からないだろうということを考えたと思うんだが、必要な事って何かを一般的な観点でa)以下に列挙していてな、これを参考に売り手の品質マネジメントシステムを作るように言っていて、これ以外のプロセス別の具体的な事は8.2以降に書いているようだな。」

熊さん 「ふんふん、そういうことでヤスか。JISはもう少し注意深く翻訳をしてもらいたいモンだって思いヤスなー。そういうことを参考に読むと、フンフン、a)以下の事は難しいことじゃぁなさそうでヤンスなぁ。でも、製品・サービスの要求事項の事と合否判定の基準の事がa)とb)の2)に別に書いてあるのはダブってるンじゃないですかぃ?」

大家さん 「いや、熊さんな、要求事項ってのは買い手が要求する事で、製品を使うパフォーマンス文化で表されていてそのままでは売り手の合否判定には使えないことが多いんでな、売り手の中ではそれを実現文化で使う判定基準に変える必要があるんだ。その典型的な例は開発を伴う要求の時で、要求はパフォーマンス品質で買い手から示され、売り手側で製品の開発が進むと合否判定基準が明確になるんだ。」

熊さん 「なるほど!」

大家さん 「それ以外に、買い手で加工するための素材の場合は多くの場合売り手側で規格化された量産標準製品のサンプル提供を受けて買い手側が試験的に使ってみて、良ければ購入契約をすることになるんだがな、」

熊さん 「作り手がわざわざ考えなくっても、量産標準品を使えたらその方が安くなりヤスし、手間もかからないってワケでヤンすね。」

大家さん 「うん、購入側の品質要求は本来購入したモノを何らかの加工をした製品の性能から決まるものだけど、加工した製品がどんなモノかは社外秘にしたいと思うのが普通だし、たとえ売り手に伝えたとしても売り手は製品に加工して製品毎に異なる評価を実施することは困難だ。」

熊さん 「分かるような気がしヤス。」

大家さん 「仮に買い手が強行しようと作り手に要求するとコストアップを認めなければならないんで、結局売り手側で決めている試験片やサンプルによる強度や濃度など評価を中心にした、買い手としては仮の品質要求に、必要な場合は多少の仕様を追加して契約を結ぶ事になるのが実態なんだ。」

熊さん 「とすると、売り手側で作った仕様は必ずしも買い手側の本当の要求にマッチしていないかも知れない、ってことになりそうでヤンスね。」

大家さん 「そうなんだ、生産設備や生産条件が変われば試験片やサンプルによる評価結果が同じでも買い手側のパフォーマンスの期待に合わないことが生じる可能性があるんだ。買い手側の評価に合わない場合は買い手側からクレームが出てくる事があるからまだ良いけど、」

熊さん 「まだ良いなんて言ったって大変なことになりまっせ。」

大家さん 「生産設備や生産条件を変えた場合、売り手側の合否の評価で不合格の結果が出てくる事があって、生産処方は変えていないので買い手側の期待には合っていると売り手側は考えるんで処理に困ってな、その結果、評価データの改ざんなどの不適切な処置をしてしまって、ある時期に不祥事の存在を指摘されることになったという実際の事例もあるんだ。」

熊さん 「大家さんが説明してくれた事例の中にそんなのがあったよな。」

大家さん 「だから、契約前に提供した評価用サンプルの生産設備や生産条件も暗黙の評価基準と扱って、変えるときには買い手側に情報を提供して確認をすることが必要なんだよな。まあそのためには買い手の方も柔軟に応じることをしないと、買い手の方もそのお客さんから『変な供給者と付き合いがあるんだ!』なんて不信を買ってしまってお互いがコマッタ状態になっちまうんだな。」

 (次回に続く) 

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