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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第二十三回】 売り手の品質マネジメントシステムの原則は?-後編


熊さん 「で、その時に必要な注意事項がa)からh)に書いてあるってワケでヤンスね?」

大家さん 「そうだね。でも、ほら、この中でa)からe)は企業の品質マネジメントシステムの作り方を言ってるんだがf)は違っててな、品質マネジメントシステムはリスク及び機会に取り組むように作んなさい、って作るに当たっての注意事項を言っているんだ。」

熊さん 「リスク及び機会って、アッシの仕事で言やぁ釘をまっすぐに打てないリスクなんてことですかい?」

大家さん 「リスクと機会については6.1で出てくると言うことだから後でまた説明するがな、いずれにしても品質マネジメントシステムに関しての事だから、もの作りのリスクと機会じゃあなくて、マネジメントのリスクと機会の事なんだよ。」

熊さん 「マネジメントのリスクって言われても、アッシの頭じゃぁよく分かんねえでガスが?」

大家さん 「いま熊さんが言ったことでいやぁ、熊さんが釘の打ち損ないをするかも知れないと言うことがリスクで、その結果で建物に打ち損じの跡が残るってようなそそっかしい事が起こることがないように、親方がその日の熊さんの体調や調子を確認するというルールを用意することがマネジメントとして考えられるよな。」

熊さん 「ウン、なるほど。そういやぁ親方が毎朝、前の晩の二日酔いが残っていないかとかカカアとけんかしてないかとか聞いてくると思ってたが、そういう魂胆だったのかぁ!」

大家さん 「これこれ、魂胆なんて言っちゃあいけないよ。親方として当然の注意を払って施主さんに良い仕事を引き渡そうと考えての事だから、大工に間違いを起こさせない良い親方だとワシは思うよ。」

熊さん 「なるほど、言われてみればそそっかしいアッシでも何とかでえく(大工)をやっておれるのも親方のおかげと言うことなんでガスねぇ。」

大家さん 「品質マネジメントシステムは,顧客要求事項と関係する法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する能力を持つってえことを示すことが目的だからな、そんな能力があるってお客も百も承知で分かっている事まで取り上げる必要はないんだよ。リスクがあると売り手と買い手が考えることを取り上げて、それにどう立ち向かうかを計画したものが品質マネジメントシステムなんだ。」

熊さん 「そうか!リスクのあるところには事前に対応計画をしてます、って言うことが買い手の安心を呼ぶってぇワケなんだ。そう思って読むと4.4.2はなるほどなと思いヤスですが、文書化しなきゃなんねいと言われると、日本人にはカチンと来るのではござせんか。なんせ、何かあったら文書にしなきゃなんねいと言われたって、アッシらは普段慣れていやせんから。」

大家さん 「いや、何でも文書にしなきゃならないって事は言ってはいないんだ。」

熊さん 「え、でも文書化しろって書いてありヤスよ。」

大家さん 「文書化と言うのは元の言葉ではドキュメンテーションって言ってな、ISO9001が買い手の要求と関係する法規制要求を満たした製品を一貫して提供出来るってことをデモンストレーションすることを要求する標準だから、口頭で説明して済むモノではないよな。」

熊さん 「口で説明しても、実際がどうなっているか分かんねぇって買い手は納得しねぇってことでヤンスか?」

大家さん 「ウン、だから、ドキュメンテーションってのは、そのデモ検査のための文書化って意味でな。」

熊さん 「それも受注前の引き合い段階のデモ検査だから詳細の要求はまだ分かんねぇけど、引き合いのある種類の製品の種類は分かるから、その種類につきもののリスクを考えた品質に関するマネジメントシステムの原則を書いた文書を用意するって事ですな?」

大家さん 「そうだ、そんな種類の発注をしようとするときに契約をしても大丈夫ですよってぇデモンストレーションするには、五つのポイントがあるんだよ。まず、受注したらどう責任体制を準備し、やらなきゃならないかを決めるための事を書いた原則文書を用意しておいて説明することだな。この文書のことを前は品質マネジメントシステムを作るためのトップのためのマニュアルと言っていたんだが、誤解が多いので2015年に発行された今の版ではマニュアルという言葉は使わなくなったんだよ。」

熊さん 「へー、そんなことがあったんでガスか!」

大家さん 「で、第二に、引き合いのある製品と同種の受注を実際にした時に用意した指示書を見せることだ。これは、契約をしたら原則書を元に実際にした指示書が用意されるということがウソではない証拠になるんだよ。」

熊さん 「目くらましではござんせんよ、ってワケだ。」

大家さん 「第三に、実際の事例で作業が計画書通りに進んでいる事例を見せることだ。これは書いたモノと実際が別ではないことを示せるから、発注しようとする企業に安心感を生むわナ。第四に、作業の結果を記録に残して、受注通りの仕事をしていることがデモンストレーションされて、発注したときにも同様の実績になるだろうという安心感を生むことが大切なポイントになるんだ。」

熊さん 「一巡りをした感じがありヤスが、まだ一つ残っているようでゲスな。」

大家さん 「そう、最後に、人間のやることには間違いがあるってぇ考え方がISO9001の基本にあるから、契約要求と違った製品が生じた実績と対応処置と品質マネジメントシステムの改善の事例の記録をみせて、契約をすれば最新の品質マネジメントシステムを適用してくれる、ってえ信頼感がデモンストレーションされるってワケだ。」

熊さん 「なるほど。」

大家さん 「これらすべてをデモンストレーションすることで、品質マネジメントシステムの原則が有効なことを説明出来るから、自分の発注するモノも、同じ要領で扱われるだろうという安心感が出来るんだ。」

熊さん 「そんなで、第三者審査機関の出番があるってことだ。てことは、アッシらが文書にしなけりゃならないのは主に検証に必要な結果の記録だけで、それもこの記録用紙に記録しろと用意されりゃ、結果以外の文書化について心配が要らねえってワケでヤンスか?」

大家さん 「そう、そうなんだ。適切な指示書や記録用紙を上の方で用意した、しっかりした仕組みを持つことが大切なんだよ。記録用紙の設計によっては、項目だけじゃなく、指定時間、検査方法、判断基準などを書いておく事が出来るから、指示を文書にする必要が少なくできるしな。」

熊さん 「と言うことは、何かというと現場が悪者にされるようなことがなくなり、現場の品質管理よりそのための品質マネジメントの仕組みが重要になってくるということでガスね。不祥事はマネジメントシステムで予防出来ると大家さんが言ってることが分かってきやしたぜ。」

大家さん 「それはよかった。ISO9001じゃぁ、指示書みたいな時の経過で修正や改正しなけりゃならない文書のことは管理しなけりゃならない文書化した情報、適合の証拠としての記録はそのままで保持しなけりゃならない文書化した情報、って表現で言い分けているから気を付けなよ。」

熊さん 「ややこしいですなぁ。で、第5条ではいよいよトップマネジメントのお出ましのようでござんすね。大家さんの話じゃぁ不祥事の予防に大事な事だって思いヤスので、これは次の機会に説明をお願いしまっさ。」

 (次回に続く) 

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