落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?
【第四十八回】 品質マネジメントシステムの内部監査
熊さん 「ンで、9.2は内部監査ですか!これもマネジメントシステムの評価の一つなんでヤンスね。内部監査と言やぁ、銀行なんかじゃぁお客から預かったお金が一円でも不明になったらテェヘンだってことで、仕事から独立した公正な内部監査が必要になってるって聞いたことがありヤスけど、なんでISO9001は普通の企業に内部監査をやれ、って要求しているンでスカイ?」
大家さん 「そこだけどな、ウィキペディアを見るってえと、ISO9001はPDCAサイクルを回し、スパイラルアップすることが必須の条件だ、って説明があるんだけど、このままでは会社そのもののためを考えて要求しているような感じがあるんだな。」
熊さん 「違うんでスカイ。」
大家さん 「普通は、会社ってのは仕事を計画し、実行し、結果を確認するために組織を作っているんだよな。だから、PDCAサイクルを回し、スパイラルアップすることもその組織が自分でやらなきゃならない仕事のハズなんだ。だけど、ここで要求してる『監査』は監査のガイダンスのISO19011って標準で『基準が満たされている程度を判定するために,客観的証拠を収集し,それを客観的に評価するための,体系的で,独立し,文書化したプロセス』って決めていてな、」。
熊さん 「客観的、独立ってことは、調べる対象の仕事に関係していないってぇ事で?」
大家さん 「そうなんだよ。例えば、今年の1月に水道管用の合成樹脂塗料メーカーが試験成績書を永く偽っていたという品質不祥事を公表してな。幸い品質には致命的欠陥はなかったらしいけど、4月にインターネットで公開されてるそこの調査結果報告書を読んだんだけど、管理職を含めて会社ぐるみで不正に関わっていたということで、内部で告発があって表面化したっていう事なんだ。」
熊さん 「そこの会社が内部監査をやっておれば、と言うことを言いたいんでガスな?」
大家さん 「ところが実は、そこはISO9001の適合性認証を取得して運用していたんだ。それで、ISO9001に基づく内部品質監査を実施していたんだけど、実際には品質マネジメントシステムが存在するか否かを表面的に確認するにとどまっていたようだ。本来必要な運用面まで深堀りしてマネジメントシステムが有効かを調査する取り組みをしていなかったということだ。だから、費用をかけたISO9001の認証取り組みも無駄になってたと言うことだな。もっとも、ISO9001の認証審査をやった認証機関も反省をして欲しいけどな。」
熊さん 「そりゃ、そこの塗料メーカーがISO9001ってぇ標準をチャンと理解していなかったてぇ事じゃないんでヤンスか?」
大家さん 「そうさな、ISO19011という内部監査の手引きがあるんだけど、審査機関の審査のやり方を勝手に想像していることから内部監査の誤解も起こっているらしいんだ。」
熊さん 「どんな風に誤解されているンでヤスか?」
大家さん 「文書や記録が揃っているか、指示書が守られているかと言った外形的な調査だけをやっている事が多いらしいんだ。指示書が本当に正しいのか、上司がチェックしているのか、記録は妥当かどうかチェックされているのかなどの、仕事の上流や下流との関連を考えた内部監査がされていないってことだな。」
熊さん 「なるほどな、調べるべき事を調べてたら、塗料会社の不祥事も防げたかも知れやセンねぇ。どおりで9.2.1で内部監査で見なけりゃなんねい事として、規格の要求事項よりも売り手が決めた要求に現場が合致しているかどうかを先に挙げているンでヤスな。」
大家さん 「それも、外形ではなく、効果を上げているか、内部監査のやり方に問題が見つかれば内部監査の方法を修正しているかということをb)で念を押しているだろう?」
熊さん 「そうでヤンスねぇ。それが分かれば9.2.2で要求していることは分かりヤス。」
大家さん 「気をつけておいてもらいたい事は、内部監査は会社が選んだ内部監査チームの仕事だけで終わることだという誤解があるみたいだが、ISO9001が要求しているのはそうじゃないんだよ。」
熊さん 「違うんでスカい?」
大家さん 「内部監査は売り手の責任として要求されているんで、9.2.2のa)やb)に要求されていることは売り手のマネジメントとして準備してc)に従って内部監査チームに指示しなきゃぁならないし、d)で要求されている監査結果を関連の管理層に報告することも、監査チームの報告を監査担当マネジメントがチェックした上で行わないと、命令権のない監査チームがe)の修正や是正処置を現場に指示することになり、本来の管理機構を崩すことになるからな。実際に、誤解している企業が少なくないようなんだ。」
熊さん 「いや、重要なことを聞きヤシた。」
(次回に続く)