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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第三十二回】  品質マネジメントシステムを支える監視、測定の機能と校正、検証


熊さん 「なるほど。じゃぁ、7.1.5に移って監視、測定のための資源、って組織が提供することを求めているけど、なんとなく違和感が感じられるンでガスけど。」

大家さん 「そうだな、組織が提供するって言うと、その品質マネジメントシステムを使う仕事の外にその機能があるように感じるって事だろうけど、ISO9001は適合性を確認する監視、測定プロセスは品質マネジメントシステムの適合性を説明しようとしている製品の実現のためのものとは限らず、その企業の中に基盤として存在しているということを前提に置いているんだろうね。」

熊さん 「そういや、個々の実現プロセスから独立していない適合性確認機能は信頼性が低いでヤンスね。アッシらの仕事でも作業の途中の測定はアッシらが自分でやりやすけンど、出来上がりの検査は別の者がやることになっていやす。」

大家さん 「ヤッパリそうかい。」

熊さん 「大家さん、測定の結果が妥当とか測定結果の妥当性、っていう言葉がでてきやすが、妥当かどうか誰が判断するか決められてイヤセンから、随分中途半端に聞こえヤスが違いヤスか?」

大家さん 「イヤな、妥当という言葉はバリッドって言う言葉の翻訳なんだが、目的に対して有効って意味でな、測定は有効数字が決まっている基準値との評価をする事が目的で行うんだから、有効数字の結果が判断出来ることが妥当の条件になるんだよ。」

熊さん 「とすると、有効数字が少数一桁の時は測定も少数一桁まで行わなくっちゃならねぇ、って事でガスか?」

大家さん 「いやいや、結果を少数一桁で表示するためには、少数二桁の数字を丸めなければならないだろう?だから、理想的には少数二桁目を読み取れる、出来なければ少数一桁に四捨五入できる測定でなければならないってワケなんだ」

熊さん 「そういや、アッシもそんな物差しをつかってイヤした。話しは変わりヤスが、7.1.5.2の測定のトレーサビリティ、ってのはなんなんヤンス?」

大家さん 「これは、7.1.5.1で監視又は測定は要求事項に対する製品及びサービスの適合を検証するためのモノと言っているだろう?適合を検証するためだったら、買い手も関心があり、自分たちがやっても同じ結果が出なけりゃ困ると思わないかい?」

熊さん 「そりゃそうでヤンス、違った結果になるんだったら検収が出来なくなってしまいヤス。」

大家さん 「だから、測定に使う機器がキチンと校正されていたり、国際的または国内に認めれた方法で校正されたり検証されていないといけないということなんだ。」

熊さん 「アッシらの使うメジャーはJISの規格品だから、校正に問題はありゃしませんヤ。」

大家さん 「そりゃ誤解だよ。国際用語ではJIS規格品の検査は校正された標準と比較してプラスマイナスいくらの範囲に入っていますという検証で、校正とは呼ばないから間違わないようにしたほうがいいよ。」

熊さん 「エー、そうなんでガスか!その国際用語では校正、ってぇのはどう説明されていヤすんですかい?」

大家さん 「ちょっと難しい話しになるんだがな、略称してJCGMて言う計量計測に関するガイドのための合同委員会があってな、そこが発行しているVIMって略称する計量計測のための用語集ってのがあって、ISOもそのまま取り込んでISOガイド99としてISOの文書にしているんだ。そん中に校正という言葉が定義されていてな、ISOの標準文書でもその定義に従うことになっているんだそうだ。」

熊さん 「じれったいな、大家さん。その定義とやらはどうなっているんでヤンス?」

大家さん 「よく測定開始前の測定装置の調整の事を校正やキャリブレーションと呼んでいたりするけれど、あれは校正ではないから気をつけな、計量学的には校正は測定標準を使って計測した測定器が示す値と測定標準が持つ標準値の関係を調べて、計測器の目盛りの値を決定すること、簡単に言えばそういう意味の定義をしているんだ。」

熊さん 「測定標準って言いヤシたね、これって大事だと思いヤスけど、例えばアッシがこれが測定標準だぁっていやぁそれで決まるって事でガスですか?」

大家さん 「いやいや、そんな荒っぽいことはできないよ。測定標準は標準値がついてなきゃ意味ないし、もともと測定の結果ってのは買い手と共通に扱えなきゃ意味ないだろう、それもISOでは円滑な国際取引を狙ってんだから、国際的に認められなきゃ意味ないよ。」

熊さん 「そらそうでヤンした。」

大家さん 「熊さんの使ってる物差し、あの長さってのは本当は、真空中の光の速さcを毎秒299,792,458mと決めて、それを測定した時に、セシウム周波数から得られる秒を使って逆算で1mが定義されることになってるんだ。それも、光の速さの実測には測定の不確かさってヤツが避けられないからな、どのくらいの不確かさで決定出来るか実力が問われるってんだ。」

熊さん 「ウッへぇ、そんなこたぁよほど専門でなきゃぁできねえや!」

大家さん 「そうなんだ、だから国の最高の機関が長さの定義を使って第一次の標準を決定し、そこから民間の校正業者の校正機器を校正する第2次の標準を決定する。校正業者は第2次標準を使って民間の測定の校正用の実用標準を用意し、民間の物差しがお互い信用できるようなるってワケなんだそうだ。」

熊さん 「測定機器の皆がみんな校正や検証をしてくれる公的な機関があるとは限んないンと違いヤスか?」

大家さん 「うん、そんなこともある。化学品でよく使う濃度なんかは色々あって一々国際的な測定標準を決めるなんてことは実情に合わないんでな、ISO9001はそんな時は校正又は検証に用いたよりどころを文書化した情報として保持する、って決めて、買い手の方もそれを確認出来るようにすることを求めているんだよ。」

熊さん 「そうですかぃ。」

大家さん 「校正も検証の有効期間が定められているから、気をつけな。」

熊さん 「定期的に校正や検証を受ける必要があるんでガショ?」

大家さん 「校正や検証の有効期間は実はなにも使わなければ有効性があるってだけで、有効期間内であれば安心に使えると言うことを意味していないんだ。使い出したらどういう扱いをされるから有効性の保証はできないんでな、だから、日頃からルールを決めてキチンと管理しておいて、おかしか事を見つけたら点検に出すことが大切なんだよ。」

熊さん 「そうですかい、良いこと聞いた。キチンと管理をして、無駄に校正や検証に出さないようにしなくっちゃぁ。」

熊さん 「次の7.1.6の組織の知識、ってぇのなんか漠然とした標題でガンスが・・・。」

大家さん 「だけど中身をみてご覧、プロセスの運用に必要な知識,並びに製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識、って書いてるから、営業や開発も含めた買い手の要求を実現するための知識が対象になっていることが分かるだろう?いろんなルールや指示を明確にしないと仕事がうまくいかないことは、当たり前と言えば当たり前のことだよね。」

熊さん 「相違やそうでヤンス、幽霊の正体見たり枯れ尾花、バカにはできないけど、見た目だけで判断しちゃぁいけねえって事でヤンス。」

 (次回に続く) 

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