見出し画像

落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第二十七回】  品質マネジメントシステムの計画とリスク及び機会の関係-前編


熊さん 「チワ-大家さん!」

大家さん 「誰かな、おお、熊さんじゃないか。」

熊さん 「いや、この前まで聞かせてもらったISO9001ってぇ国際標準の話しの続きは、確か計画でヤンしたね。いよいよ製品作りの計画に入るのでヤンスね?」

大家さん 「熊さんのそそっかしいのはいつも変わらないね。よいしょっと、パソコンを持ってきたからJISCのサイトからJIS Q9001を立ち上げて、っと、ほらね、第6条は計画って標題は付いているがな、6.1.1を見てもらうってえと、品質マネジメントシステムの計画を策定するとき、って書いてあってな、製品実現の計画とは書いていないんだよ。」

熊さん 「なあんだ・・・、そうか!4.3で品質マネジメントシステムを作れ、って言ったのでその作り方を言ってるのでヤンスか?」

大家さん 「そうなんだ。第6条の標題は翻訳JISでは計画となっているがな、原文ではプラニングとなっているから、まさしく計画作りって言葉の方がぴったり来るとワシは思うんだ。なんせ要求されていることは、品質マネジメントシステムの中身に関することではなくって、品質マネジメントシステム作りの折りに注意しなけりゃならない事だから。」

熊さん 「6.1.1の書き出しが品質マネジメントシステムの計画を策定するとき、ってなってイヤスが、アッシにはなんか引っかかるんでヤンスが・・・。」

大家さん 「ああ、これもチョット変だよな。品質マネジメントシステムの計画の策定と言うと計画と品質マネジメントシステムは別物みたいな印象を与え兼ねないけど、原文をみると品質マネジメントシステムを計画するとき、ってなっているんで、読み手をややこしくさせるような翻訳は避けるべきじゃなかったのかな。」

熊さん 「馬から落ちて落馬して、みてえなことでガスな。」

大家さん 「ま、悪口は止しておこう。6.1ではリスクと機会をよく考えて品質マネジメントシステムという計画を作る事を要求しているんだ。6.1の標題はリスク及び機会への取組み、ってなっているけどな、元の英文はリスク及び機会に取り組むための活動、ってなっていて、この方が6.1.1が書いていることを表す標題としてを分かりやすかったと思うんだよ。」

熊さん 「なるほど、リスクがあるから悪いことにならないようにリスクを押さえ込んだり避けたりしなけりゃならん、ってぇことなんでガンスね?。」

大家さん 「極端にいやぁ、リスクのないところにはわざわざ計画を作る必要はないって事だよ。これは別に品質マネジメントシステムに限ったことではないがな。」

熊さん 「ところで、リスクってのは普段、何か結果がうまくいかない事を覚悟の上で行うときに使っていると思うンですヤンスけど、それで良いンでガスか?」

大家さん 「ウーンと、もの作りではモノがうまくできない可能性などという説明が英語辞書でされているようなのでそれで良いんじゃないかと思うけどな、ここではマネジメントシステムを考える上でのリスクで、ちょっと違う使い方をしているみたいなんだよ。」

熊さん 「どう違うンでぇ?」

大家さん 「ISO9000っていう品質マネジメントシステムの基本と用語を書いた標準をみるとリスクは不確かさの影響、って説明しているんだよ。」

熊さん 「チョット待ってくなんせいよ。ISO9000か何か知らないけどよう、その説明をきくと、そこで影響といやぁ影響を与える側、言ってみりゃぁ原因側に立って言っていてよ、影響を与えられる側、つまり普通に言う場合みたいに結果側に立っては言っていねぇって事を言っているように聞こえヤンスが?」

大家さん 「そうなんだ。考えて見ると、ISO標準の作り方ではオックスフォードなどの英語辞書に出ているような使い方をしている言葉にはわざわざ用語の定義をしないことになっているんだから、ISO9000でリスクの定義を入れていることは、普通の使い方とは違うって事を示しているんだと思うよ。」

熊さん 「へー、すると機会ってぇのはどう考えたら良いんですカイ?リスクという悪いことの起こる原因と並んで書いてあるってことは、良いことに繋がるような原因ってぇ事ですかい?」

大家さん 「熊さんの戸惑うのも分かるよな、実際に戸惑った人が少なからずいたようだから。ヒントはな、普通、リスクは好ましくない結果となる場合に使い、好ましい結果となる場合にはチャンスなどの言葉を使っているけど、さっき説明したISO9000のリスクの定義には、影響とは期待されていることから好ましい方向又は好ましくない方向にかい(乖)離することをいう、って注釈が付いているんだ。」

熊さん 「それで?」

大家さん 「期待されていることから好ましくない方向にかい(乖)離するのは普通にリスクと考えるんだが、好ましい方向に振れるってことは普通はリスクとは考えず、チャンスと考えるんじゃないかな?」

熊さん 「てことは、結果の好ましいことへの振れもリスクに含まれるってことでガスか?機会ってのはリスクの反対の好ましい事をかんげえて置けば良いと思っていたんでヤンスが、とはどうなるのでヤンスか?」

大家さん 「原文の英文ではリスクとオポチュニティと言っているんだがな、この二つの言葉は一つの定冠詞を使って書かれていて、ホラ、前に品質方針と品質目標について言った事を思い出してみなように、二つの言葉が相互に関係している事を示しているんだよ。」

熊さん 「たしかにそんなことを聞きヤシた。」

大家さん 「ISO9001では、ISO9000のリスクの定義の注記に書いている好ましくないことにしろ好ましいことにしろ、6.1.1のa)によれば品質マネジメントシステムの結果に影響するリスクを特定するってえ事が要求されているだろう。ということは、普通に言う結果に付随するリスクとは違って、結果に影響を与える原因系の不確かさを特定する事を求めているってワケのようなんだ。」

熊さん 「ってことは、目標からの結果のズレは原因の不確かさが引き起こしているモンだから、まず、原因のマネジメントの不確かさを特定すりゃ好ましくないことは起こらないように、好ましいことは確実になるような取り組みが出来るってぇことでガンスですかね?」

大家さん 「よくお分かりだねぇ、熊さん。6.1.1でリスク及び機会の決定って言ってるのは、原因のリスクの特定と、特定されたリスクの対処の可能性があることを決定する事をまとめて言ってるようだね。」

熊さん 「なるほど、そう考えるってぇと6.1.1のこのb)からd)の言ってることが品質マネジメントシステムの適用の目的の説明として分かるようになるでガンス。」

大家さん 「6.1.1で対処可能な不確かさの存在を確認したら、その対処方法を6.1.2の示す原則に従って計画する事を求めている、ってなワケなんだ。」

 (次回に続く) 

 < シリーズのホームページへ

いいなと思ったら応援しよう!