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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第十七回】 一貫した能力の実証ってなんだ?


熊さん 「ところでさ、第1条に一貫して提供する能力を実証って書いてあるじゃねぇですか、なんでわざわざ一貫して、って言わなきゃなんねいンでぇ?なくても良いように思いヤスが・・・」

大家さん 「一貫してっていうのはな、常にっていう意味なんだよ。前に、このマネジメントシステム標準の原則に従った仕事の仕組みで仕事を進めていますってことは取引の交渉の時に必要だけど、買い手の目線で考えりゃその効果は製品が納入される時にも維持されてなけりゃ意味がないって言ったろう。」

熊さん 「あっ、そうなんか!売り買いの契約をする前に、こう言う実際に効果のある仕組みを持ってるよっと説明出来なきゃダメだよって標準は言っているンだ。てことは、現物の品質の保証ではないよな、ウン。マネジメントシステムは仕組みの保証のためなんだってぇ大家さんのこの前の話を思い出すなぁ。」

大家さん 「ほらな、組織に能力が有りますってぇことが要求の目的になっていてな、製品の品質が確かなものってぇことは直接の目的にはなっていないことが分かるよな?なんせ、契約前にはまだ製品はできてないもんだから。もっとも、将来も続く能力があると誰かが保証してくれれば結果として品質は確かになるけどな。」

熊さん 「なるほどな、こうして品質を確かにしろ、と言うようなことを書こうとすると製品毎に違うから大変だけど、そのための仕組みだとモノができてなくても共通的な書き方ができるって前に大家さんは言ってやしたね。」

大家さん 「そうなんだ。だけどな、第1条の中に『この規格の要求事項は,汎用性があり』と書いてあるよな、だけど、ここんとこの元の言葉では『総称的な原則であり』という意味の英語をでな、具体的な事でない原則だから『あらゆる組織に適用できる』って言うことで、あらゆる企業がこのままで使って良いと言うことではないんだよ。」

熊さん 「え?違うんでヤンスか?てっきり標準書に書いてある通りで実際のマネジメントシステムになると思ったンでヤンスが。」

大家さん 「原則としては『あらゆる組織に適用できる』けど、実際の細かいまでは事は同じにできないから、具体的には会社の実態を考えてシステムを作りなさいと言うことを第4.1条で言っているんだ。」

熊さん 「前に大家さんが翻訳がくせ者って言ってたけどそうなんですね。なるほど、普段は原則と実際は別だよってな事をオレたちはつい言っちゃうけど、ISO標準では原則にもとづいて実際を決めなきゃなんねいって考えてるンだ。」

大家さん 「以前は、標準書のオウム返ししたことを書いて適合性の第三者評価を受けてる会社もあったそうだけど、今はだいぶ改善したそうだけどな。」

熊さん 「ふーん、じゃぁ、企業の品質マネジメントシステムってぇのは、企業にてぇして書いたISO9001の要求事項にてぇして、その企業はどうしてるかってぇ回答書みてぇなもんでなけりゃなンねいってぇ事なんでヤンスね。」

大家さん 「そうなんだねぇ。担当の人たちにとっては原則なんてどうでもいいかも知れないけど、お客から見れば、会社毎、担当者毎に考えが違うんだったら何を信じ、どう比べて良いか分からないって気持ちになるから、原則を大事にして作った標準は取引にあたっては大切にしなくっちゃならないんだよ。」

熊さん 「ところで、『能力をもつことを実証する必要がある場合』って書いてありヤスけど、実証するって何でヤンス?私は実証しましたなんて言ったって、そんなこと信用してもらえるなんて思えないンと違うんでヤンス?」

大家さん 「ああ、確かにそうだね。元々のISO標準にはデモンストレーションする必要があるときとなっているンだ。デモって言葉は関係者に見せて分からせるって意味で、ワシの若い頃は学生の政治運動が盛んで、よく街頭デモをやって警察とにらみあったもンだよ。」

熊さん 「じゃぁこれも相手に見せて理解を得る必要がある場合、って言った方がよさそうでヤンスね?」

大家さん 「その方が元の意味に合ってるだろうな。」

熊さん 「もう一つ教えておくんなせ-な。第1条のb項でマネジメントシステムを実行してるのに、その上さらに顧客満足の向上を目指す事を言ってるのは、一貫して提供する能力をもつことをデモしたマネジメントシステムでは不満足があると言うことを意味してるようで、おかしくないですかえ?」

大家さん 「一貫して提供する能力をもつ事をデモするために品質マネジメントシステムに関することってのはな、実は第4条から第8条までで書いてあるんだ。」

熊さん 「そうすると、ここに書いてある第9条のパフォーマンス評価と第10条の改善ってヤツはナンで要求されているンでぃ?どさくさに紛れて関係ないことを要求してるってなりやせんかぃ?」

大家さん 「ここで言っているパフォーマンスも改善もマネジメントシステムの事なんだよ。」

熊さん 「へー、てっきりできる製品の事かと思いやした。」

大家さん 「日本では決めた仕様、その実現のためのルールは絶対実現しさせなけりゃならないものと考える傾向があるみたいだがな、合格率って言葉があるだろう?人間のやることに絶対はないというのが西洋の考え方だから、マネジメントシステムだって100%の運用はないだろうから、第9条と第10条は100%の運用になるように評価して改善する努力をすることを求めているんだ。ただし、努力を求めているだけで、どんだけよくするかという目標は要求されてはいないだよ。」

熊さん 「あー、そうでヤンスか。それですっきりしやした。」

大家さん 「中には顧客満足の向上って事を製品を高品質に上げるって意味だと考えている人たちもいるみたいだがな、そうじゃないンだ。もしそうなら、契約で決めた仕様を変えることになるからそれは勝手にはできないことだ。」

熊さん 「なあるほど。(ウ――ンと・・・) 話を蒸し返して申し訳ありヤせんが、実証ってのは元の英語ではデモになっていて見せて納得してもらう事だってぇ大家さんはいいやしたね。だけンど、我が社はデモしましたから信用してくださいなんて言ったって、言うのは簡単だけども、実証と同じで誰も信用してくれやしないでヤンしょぅ?」

大家さん 「ああ、これも説明が足りなかったな。悪かった!第三者認証制度というのをちょこっといったろう、これはそこんとこを補うための制度だけどな、時間が遅くなっているんで熊さんのおかみさんがご機嫌悪くなってはいけないから、今日ンところはここまでにさせてもらって、この次に説明させてもらうよ。」

熊さん 「その方がいいな。じゃ、大家さんありがとさんでした。この次もよろしく。」

 (次回に続く) 

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