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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第二回】 日立アステモ社の品質検査不祥事の陰にマネジメント不全?


大家さん 「『ものづくりの現場』というと現場の作業員を思い浮かべやすいよね。でも、現場の作業員が勝手に手抜きをやっていたとは、これはちょっと考えにくいんじゃないかな。」

熊さん 「どうしてそう言えるンでぃ?」

大家さん 「なんせ作業員は作業標準書に従って仕事をしているはずだから、作業員の仕事が適切でなかったとしても、その裏にその作業標準書が正確には作られていなかったのではないかという疑問が浮かんでくるんだよ。」

熊さん 「ン!そうか、アッシの大工仕事も親方から仮に間違った指示をされても、指示が正しいと思って従うのが職人の仕事だもんな。もしそんなことがあったとすると、現場の作業員に不適切な仕事をさせてしまうような間違った作業標準書作りの仕事を現場のスタッフがしていたという事でやんすよね。」

大家さん 「うん、だけど企業の中ではそんな不適切な標準書や指示書というのは思い込みや誤解で間違って書いてしまうことがあり得るだろう?だから、上の人などが標準書や指示書の案をチェックして確認することが当たり前に行われているはずなんだよ。」

熊さん 「へー、そーなんですかい!でも考えて見れば当たり前のことみてぃですねえ。上の人だって、作業標準書が必要だって思うからスタッフの人に作成を指示したはずでガスんで、スタッフの人が適切な作業標準書を作ったか確認する責任があるはずでヤンスね。」

大家さん 「うん、そうなんだ。こんなふうな事を『マネジメント』といってな、品質の仕事に限らず企業の中の仕事に共通して必要なことなんだ。現場の実務をする人に適切な実務をしてもらうために、社長さんから始まって何段階かのマネジメントが連携する必要があるんだな。」

熊さん 「へー、そんなもんでやんすか。てぇことは、もしこれからの特別調査委員会ってぇやつの調査で作業標準書や指示書のヘンテコなことが分かったら、そのマネジメントってやつがきちんとしてなかったってえことが本当の悪さをしていたってことになって、現場の悪さではなかった、再発対策はマネジメントにっ、てことになりやすね。」

大家さん 「そうだね。」

熊さん 「でもさ、現場の試験、検査をやっているやつが作業標準書を無視して勝手なことをやっていたってこともあり得るんじゃありませんかい。」

大家さん 「その可能性もあり得るけど、実務者がおかしな事をやっていないかを監視することも企業のマネジメントに含まれることだ。それに、おかしな試験、検査は20年も続いていたという事だから、個人の問題ではなく、マネジメントの仕組みに疑問が大きいよ。」

熊さん 「そういやそうだ。おかしな事を続けていたことを上の人間が20年も気がつかなかった、何てことがあったとすりゃ、それこそおかしな事だぁ。」

大家さん 「だから、実務者の仕事だけでなく特別調査委員会にはむしろマネジメントの仕組みについてよく調査して公表してもらいたいものだね。」

熊さん 「現場の問題より、工場全体、もしかすると会社全体のマネジメントってぇやつの仕組みに疑いがあるってぇわけですか。」

大家さん 「うん。ただね、プレスリリースによると、今回不適切な試験、検査が明らかになった二工場は日立が2004年に買収したトキコという会社の拠点だったと日経ビジネスのウェブサイトが報じている

熊さん 「それがどうしたって言うんでぃ?」

大家さん 「マネジメントの仕組みが工場別になっているようなんでな、トラブルを引き起こした工場はトキコ時代のマネジメントの仕組みを引きずっていた可能性も考えられるんだなあ。だから、必ずしも日立アステモ社全体のマネジメントに疑問があるとは即断できないんだ。この辺りも特別調査委員会が調査して報告してくれると、多くの企業の参考になるのだけどね。」

熊さん 「だけど、工場を買ったのに、仕事の仕組みは前のままで見直されなかったとすると、『日立アステモはだらしねえなぁ。何してたんだよ!』とつい思っちまうんですよね。」

大家さん 「まあ、買収された工場の従業員のやる気を削ぐことを気にして仕事の仕組みに手をつけなかったということもあるかもしれないけど、もしこれが本当だとすると20年の経過を考えれば言訳にはならないと思うよねぇ。」

熊さん 「そんたくってヤツですかぃ?でも、大家さんの言うことが当たっていると、現場を適切に仕事させるかどうかはマネジメント次第ということになるんじゃありゃしませんか。」

大家さん 「うん、そうなんだよ。特別調査委員会報告でどういう報告がされるか待ってみたいと思うよ。
まだ日立アステモで何があったか詳しいことが報告されていないンでこれ以上はなんとも言えないけど、興味があるみたいだから、次に熊さんと会ったときに、別の会社の例で独立の調査委員会報告結果が公表されている品質不祥事について考えてみようじゃないか。」

熊さん 「へい分かりやした、今度また来て大家さんに訊ねますんで、そん時にまた教えてもらいやしょう。」

(次号に続く)

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