
月曜日の嘉陽田さん 第六話 高校2年4月
「朝子、今日も早起きね。お母さん嬉しいわーアンタが寝坊しなくなって」
「フフン、これが私の真の姿なのだよ母上」
ヤンキー生徒会が始まって2週間になろうとしている。私は囲サマのオンナになった!少なくとも対外的には。
タバコのことは誰にも言わないことにした。だって、秘密にしておけば、私は囲サマに何度もキスしてもらえるかもしれないから。してもらえないかもしれないけれど、完全無欠の囲サマに抵抗してもムダだ!おいしい思いをしたければ、長いものにはいくらでも巻かれてやるよ、フフン。
「会長!おはよう!」
「やあ嘉陽田さん、おはよう」
進級して以来、毎朝囲サマと同じ時刻の電車に乗る。幸せだ。初対面のときにお尻を触ろうとした対象と、密着して隣同士のつり革につかまる。大事なことだから二度言う。幸せだ。
新生徒会は、朝と夕方1日2回のミーティングをする。朝ミーティングが終わったら、ナガレとバナナちゃんに余裕しゃくしゃくで会いにゆける。
「それでは新入生歓迎球技大会の段取りですが...」
さすがにミーティング中は囲サマとくっついていられないけど、学校運営の裏側を眺めながら囲サマのイケボに浸るのは最高だ。生徒会ってこんなにテキパキしてるんだ!
「ヘイ、お二人!IC(イチャついてる)?」
「おまいう!囲とICのくせに!」
ナガレとバナナちゃんからステレオで返事が飛ぶ。うん二人別に付き合ってない、I know。
「朝子黒髪もかわちぃ」
「I know 、バナナちゃん」
「なぜか先月から英語で答え始めたよな朝子?」
「I know 、ナガレ」
「分かってる、か。なんか生徒会入ってから頭が高すぎね?」
「頭じゃない。鼻が高いのだよ、フフン」
「余らの地位保全どころか『授業に出ない権利』とか主張して、地位向上したからね...」
バナナちゃんはじめ周囲が驚くのもムリはない。囲サマが通したんだ。「彼らの学力は僕が上げますから、とか言って。卒業単位が取れるように個人指導するから、って。それで通った。本当に。実際、ナガレとバナナちゃんの頭も良くなった。
マジで囲サマしか勝たん。無敵。ヤバい。できないことは何一つ無い。敵に回してはいけない。私の勘がそう告げる。逆に、味方にすれば怖いものなしだ。普通3年生が務める生徒会長を2年生で務めあげるのだって、上級生から異論すら出なかった。
きっと夏休みは生徒会の合宿とやらで私は囲サマとICだ、対外的には。フフン。
第七話につづく
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