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月曜日の嘉陽田さん 第四話 高校1年3月 その1

第三話はこちら
今日も眠い目をこすりながら、月曜日の「朝の会」に向かう私。
バナナちゃんとナガレが待つ学校裏門の階段に差し掛かった時だった。

先生らしくない甲高い声が私たち3人の耳をつんざいた。
「コラーっ、お前ら、教室に戻れ!」
「げっ、体育の岡崎!」

バナナちゃんは動じない。
「えー、アタシら朝ミーティングダルいだけですよー。授業始まったらちゃんと教室戻るんで」
「お前らがそう言って戻った試しが無いだろ!ほれほれ、さっさと各教室に向かえ、む、か、え!」
む、か、えのリズムとともに、3人ともお尻を一発ずつ軽く蹴られた。

「岡崎、コレ暴力。体罰。しかるべき所に出てもいいんですよ」
ナガレが反発するけど、岡崎は慣れた感じで切り返す。
「今のは手の代わりだ。女生徒のお尻に手で触れたらセクハラだからな」
「オレ男ですけど」
「ジェンダー平等ってやつだ!」
「ハイハイ、分かりましたよ。じゃ朝子、バナナちゃん。1時間後にまた」
「ウッス!」
「OK」

私とバナナちゃんが生返事して教室に向かうフリをした。
しかし歩き出そうとした私を、岡崎は呼び止めた。
「ちょっと嘉陽田かようだ。こっちに来い」
「はぁ?何だよもう」
かこいのやつがな、お前を生徒会に入れたいと言ってる」
「はぁぁ?」
同じく教室に行くフリだけしていたバナナちゃんとナガレとで、一斉にはぁ?が出た。

「何それ?なんで囲サマが私を?」
「それが俺にもわからん。彼が語るには『嘉陽田さんはいろいろ面白いところがあるから、堅苦しい生徒会を変革できるかも』だと」

「やったね朝子!囲サマと一緒にいられるよ!」
「おめでとう朝子。娘を嫁にやる父親の気分だ」
バナナちゃんとナガレが冷やかす。
「だけど、私が生徒会とカラー違うの一目瞭然でしょ?えっ、待って待って。いやホント、なんで?」

岡崎は少し困った顔で私に説明する。
「一応言っておくけど、先月のお前がした前代未聞の告白、囲は悪く思ってないようだぞ」
「ちょっと待てぇ!なんでその話知ってんの?」
「学校一の人気者がヤンキー娘をお姫様抱っこして歩いたんだ。たちまち学校中の噂になるのは自明だと思うが」
「あ、アレ見られてたんだ......」

「バナナちゃん、オレたち何もバラしてないよな、な?」
「うんナガレ、なーんも広めてないよ?」
あからさまな嘘だコイツら......
「岡崎、代わりに断っといて」
「いいから放課後、生徒会室まで出向いてくれ」
「......分かった。何が起こるか分かんないけど、行くよ」

そして(ほどほどに授業は受けたりサボったりして)6限が終わり、私は生徒会室に向かった。
私は目を疑った。
あの囲サマが、タバコ吸ってる。。。?

第五話につづく

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六畳十益(ろくじょう とます)
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