お腹をすかしたライオンとの上手な付き合い方
ある日の午後です。
仕事がひと段落し、上司と雑談をしながらデスクに向かっていました。
私のデスクはいつもの通りクリップやら、メモ用紙の断片、付箋、なんかが全然整理整頓できておらず散らばっています。
いつも「いつか片付けよう」と思うのですが、その「いつか」はなかなかやって来ません。
私は上司に話しかけます。
「やっぱり、知らないってことは恐怖だと思うんですよね。」
「というと?」上司は問いかけます。
「何て言うか……。無知が原因の差別とか、知識がないがための偏見とかがそうだと思うんですよ。」私は障害者の就労支援施設で働いています。そこでは、障害を持った方の社会復帰の支援の仕事をしています。
私自身も精神疾患を患っているため、障害当事者が障害者と一緒に働くスタッフいわゆるピア・サポーターとして勤務しています。
「何かについて全く知らないってことは”恐怖”に繋がると思うんです。」
「無知がゆえの?ってこと?」上司は問いかけます。私の上司はとても聞き上手な方なので、私も色々なことを話します。ついつい話しすぎることもよくあります。
私は以前から感じていたことを言葉にして吐き出します。
「精神疾患の人って、知らない人から見たら、まだ、怖いとかヤベーヤツとかに見られることが多いと思うんですよね。」
上司は私をじっと見つめます。目が「続けて?」と言ったようです。上司の無言の目はとても聞き上手です。
「そのイメージを払拭するためにはどうしたらいいのかなって、時々考えるんですよ。」
嘘です。時々じゃなくてずっと悩んでます。
「例え話なんですけど、例えば未知のナニカが扉の向こうにいて、その扉の向こうに行かないといけないとき、ナニカの存在って怖くないですか?」
「精神疾患に対する世間のイメージってそんな感じだと思うんですね?」
「でも、そのナニカがお腹をすかせたライオンだったら。どうでしょう?」
「ライオンは怖いけど、未知のナニカに立ち向かうときより恐怖が少しやわらぐと思いませんか?」矢継ぎ早に質問して上司に同意をもとめます。
「恐怖って無知が原因の多くを占めていると思いませんか?」
なるほどと、上司は私の問いかけに少し考えたあとこういいました。
「無知や情報不足が原因の恐怖には、情報があればいいんだね?」「お腹をすかせたライオン問題の解決方法は簡単だよ。」
エッ、どうやって?
聞き上手の上司は人の好奇心をくすぐる話し上手でもあります。
「空腹のライオンの情報があれば大丈夫なら、Googleでお腹をすかせたライオンとの上手なつきあい方を検索すればいい。」
心に残る言葉
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