聞いといて何だけど、その答えは雑じゃないかい
「強さってなんだろう」
それは質問にしては曖昧で、独り言ほど軽い言いようではなかった。だから、私は反応に困った。こちらが嫉妬してしまうほどに整頓された思考回路を持つ君らしくない言葉だと思った。うつむき気味の首はそのままに、少しばかり目を見開く。案の定自分でも驚いている様子。思わず口から零れたといったような表情がたまらなく面白い。思考好きの君のことだ、どうせまた難しいことでも考えていたのだろう。二人の合間を縫うように抜けたのは、風と沈黙。どういった経緯で強さを吟味する必要に至ったのか、足の踏み場もない程散らかった私の思考回路ではその解は見つけられないだろう。
強さとは、便利な言葉だと思う。「その時々の状況や人間が定める理想」それが、私にとっての”強さ”の正体だ。だって人は何かに打ちひしがれた時、強さを求めるだろう。それは心の強さ、体の強さ。形は違えど最も望む結果を手に入れるための願望であることに変わりはない。相対的に変わる価値にどれほどの意味があるのか。”強さ”にどれほどの意味があるというのか。努力し変わることで強くなるのか、弱さを自覚し受け入れることで強くなるのか、そんなのさじ加減じゃないのか。
「さぁ。」
沈黙を裂いたのは上の空のようで肯定も否定もない、吐息のような言葉。
このくだらない物語の答えには、それで十分だと思ったのだ。