シャドー・ライター
「もう少しだ」
その先に行けば水がある。
これで私は助かるのだ。
力を振り絞って私は目的の場所までたどり着いた。
グラスを取る。半分開いた口を近づける。グラスをゆっくりと傾ける。水は揺れない。ああ。何もない。
何も入ってない!
「ここまで来たのに……」
それはシャドー・ライターの描いた影に過ぎなかったのだ。
どうせならもっと遠くで知りたかった。
もっと下手に、うそとわかるように描いてくれればよかった。
うそを真に見せたのは、シャドー・ライターの技量と私の中にある欲望だ。うそは破れ命の水は消えた。
しかし、欲望はまだ滅びない。
私は真のオアシスを目指して歩き始める。