さよならBox
キレハシのチケットを持って
君は球場の裏で待っていた
歓声や叫び チャントが聞こえる
誰が打ち誰が投げ誰が走り
誰が一周したのか君は知らない
君のチケットは9回裏から
最後の最後の切り札だ
長い間グローブを持って待ちかまえている
いつかくる場外ホームランをキャッチするのだ
その時だけは君も参加者になることができる
ウグイスが鳴いている
太鼓が鳴り響いている
風船が空高く打ち上がり星空に消える
花火が打ち上がる
がやがやしたりざわざわしたりする
ホームランボールはまだ飛んでこない
誰が倒れ誰が打ち返したのか君は知らない
みんな想像の中のゲームだ
膨れ上がったスタジアムから
ぞろぞろと人が這いだしてきた
「惜しかったね」
野球は表で終わってしまったと言う
そんなことがあるものか
君はチケットを握りしめて
疲れ切った人々の足取りを見つめている
君のゲームはまだ始まってもいない
・
歓声の外壁沿いに身を置いたいつかの君は招待選手
おのおのの文句が募るテーブルに並ばぬきみは7の隠し子
金になる金にならないみかん箱いっぱい4月もうさよならだ
吹き抜けた通過列車はTOKYOを目指す4月のさくらひとひら