夏コミで頒布した本の試し読み
case0.5 オセロゲーム
これは海斗達が仮想空間に移動してからのお話……。
この日海斗は世凪達と家で過ごしながら端末を使って何か作業をしていた。
「海斗〜、何してるの?」
少し暇を持て余していた世凪が後ろから海斗に声を掛けた。
世凪の声に気付き、海斗は後ろへ振り返りながら声を掛けた。
「あぁ、世凪か。ちょうどよかった、少し手伝ってくれないか?」
「え? 何をすればいいの?」
「またこの中にいる人達のストレスが溜まって来ていてね、それを解消出来る方法があればと思ってね」
「え?それならこの前作ったいん……」
そこではたと口を噤む世凪。
(やばっ……これ海斗の前じゃ禁句だった……)
そう、先程世凪が言いかけたものはいんすったーという、以前海斗がこの仮想空間内で飽きが来ないようにと制作したアプリがあったのだが、とある理由があり削除する事になった……。
(気になる方はぜひNintendo Switch版の白昼夢の青写真をプレイしてください)
「……? どうした? 世凪」
いきなり黙ってしまった世凪を不思議に思って聞き直す海斗。
「ううん! なんでも無いよ⁉︎ 何でも……」
「ならいいんだが……」
海斗は少し訝しんだが、特に気にしないようにした。
「それで?海斗、今度は何を作ろうとしてるの?」
半ば話を変えるかの様に本来聞きたかった事を聞く世凪。
「今度はゲームを作ってみようと思うんだ」
「ゲーム……? 何それ?」
ゲームという聞き慣れない単語を耳にして首を傾げた世凪。
「ねぇ、出雲、ゲームって知ってる?」
ちょうど近くにいた出雲に尋ねてみる世凪。
「はい、ゲームとは、少なくとも二人以上のプレイヤー同士が対立構造を持ち、ルールに従って定量化可能な結果にいたるシステムの事です」