定期借地権付マンションの利回りについて

友人らが家探しをしているのを手伝う?中で、定期借地権付きマンションについて興味を持ちました。
このnoteでは定期借地権とは何かというような説明は割愛し、定期借地権付きマンションの利回りをどのように考えるか、という点について簡単に触れてみたいと思います。(私は純粋な素人なので間違いがあっても責任は取れません。。)

まず、不動産一般の利回りについてですが、表面利回り(グロス利回り)は、単純に年間家賃収入を物件価格で割ることによって求めることが出来ます。

仮に、PパークスS川シーサイド・ザ・タワーという物件があるとします。
同じ程度の条件(面積は約72mの3LDK程度、方角、階数)の部屋が、片方は賃貸に、片方は売りに出ているとしましょう。
賃貸募集は管理費込みで34万円、売却は11500万円で出ているとすると、
この物件の表面利回り(グロス利回り)は34*12/11500=3.55%となります。

一方でここにSタワーS川という定期借地権付の物件があるとします。
このマンションは
賃貸では36万円、売却では9000万円で出ているとしましょう。
この物件の表面利回り(グロス利回り)は4.80%となります。

とするとPパークスS川よりもSタワーS川の方が利回りが高い、つまり今から購入する人にとってはSタワーS川の方が割安だということが言えるのでしょうか?

ここで小難しいことをいうと、この方法で求める利回りはいわゆる永久債(コンソル債)の現在価値を求めることと同じで、『将来にわたって無限に今の家賃収入が続く』ことを仮定した場合の割引率となっています。

実際には家賃収入は経年劣化によって徐々に低下していくことや、物件を所有した場合には管理費・修繕積立金、固定資産税等が発生すること、定期借地権付物件の場合は地代がかかること・さらに一定期間後に返却の必要があることから単純な表面利回りでの比較はできないことが分かります。

この点を加味して実質利回り(ネット利回り)を考えてみましょう。

まず管理費・修繕積立金は、1m^2あたりそれぞれ200円程度が平均的と考えられるため、70m台の(同程度の)3LDKであればどちらも月3万円の負担と考えて良さそうです。

続いて経年劣化による賃料の減少については、世間一般に1年経過するごとに1%程度減少すると考えられているようですが、総務省「借家家賃の経年変化について」

https://www.stat.go.jp/data/cpi/pdf/kenkyu1.pdf

によると、マンションタイプの住宅については年間0.8%程度減少する(1.設備がボロくなる効果、2.設備が社会的に陳腐化していく効果の合算)と試算されています。(個人的には0.8%減少はやや少なく、実際には1.0%程度と考えるのが妥当なように思っていますが)

固定資産税については(全く無知ですのでネットで調べた情報によると)1億円の物件であれば年間50万円程度、という記載が複数ありましたのでこれを採用します。(月4万円の支払いと仮定します)

ここまでの情報でPパークスS川のネット利回りを考えてみると、

月間の賃料は現在34万円ですが将来にわたって1年あたり0.8%ずつ減少していく、ただし毎月、管理費・修繕積立金・固定資産税で7万円が出ていく。これが将来の想定キャッシュフローになります。

このキャッシュフローをある一定の利回りで割り引いて現在価値に割り戻したとき(DCF法)、その現在価値が11500万円となるような利回りを求める、という問題を解くことでネット利回りを知ることが出来ます。これはエクセルなどで計算すればよく、この場合のCF割引率(ネット利回り)は1.68%であることが分かります。

ちなみにこの方法だと200年後くらいまで正のキャッシュフローが発生することになってしまい、ちょっと違和感がありますが、(マンションの法定耐用年数を遥かに超えています)
このように考えないと70年定期借地権と普通のマンションを比較できないので一旦このように考えることにします。

続いて定期借地権付きマンションであるSタワーS川について考えます。
まず(実際そうなので)定期借地権の残りは54年であると仮定すると、
賃料収入は、現在36万円から毎年0.8%ずつ減少し、54年後に打ち切りとなります。(54年後の賃料収入は23.5万円程度となります)
またSタワーS川は3万円の管理費・修繕積立金、4万円の固定資産税に加えて、借地の地代・解体積立金として月2万円を余分に払う事になります。(なるとします)
このとき、このキャッシュフローをある利回りで割り引くと、これが9000万円だということになるのですが、エクセルで計算すると割引率(ネット利回り)は1.69%程度であることが分かります。

なんということでしょう、表面利回り(グロス利回り)では3.55%と4.80%と、SタワーS川の方がかなり割安に見えましたが、実質利回り(ネット利回り)では、1.68%と1.69%とPパークスもSタワーも非常に競っていることが分かりました。

定期借地権付マンションはお得!ということはなく、実は将来のCFが短い分、得られる収益が少ないことが物件価格に反映されているだけなのでした・・・

話はこれで終わってしまうのでしょうか。実は筆者はいくつかの理由で定借にも優位性があると考えています。次回以降、定借物件の持つ優位性について触れたいと思います。


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