『Tailcoat』 零着目「Prologue」
広がりのある空間内にヴィクトリアン調のテーブルや椅子、ソファが立ち並んでいる。
等間隔で並んだそれらには、この場に相応しい華やかな女性たちが座っており、その前のテーブル上には心ときめくデザートプレートやアフタヌーンティーセットが用意されていた。ティーカップのコレクションはどれも滑らかな質感に瀟洒なデザインだ。頭上から降り注ぐ光によって艶めいている。
天井には煌びやかなシャンデリアが燦然と輝いており、壁面や柱には印象派やそれに類する絵画が飾ってある。それらは豪華絢爛な洋館内の雰囲気を演出していた。
そこでは誰もが穏やかな様子で過ごしていて、静かで落ち着いた時間が流れている。
そんな空間の中を、館内に流れるクラシック音楽に合わせるように、男性使用人《フットマン》達の燕尾のような裾が揺らめいていた。
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