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『Tailcoat』  三着目「ちぐはぐ」

 僕は仕事終わりにあみちゃんと待ち合わせた。  社長からの通告や同僚の態度がショックで頭の中から完全に抜け落ちていたが、今日は食事に行く約束をしていたのだ。彼女からのメールはその確認だった。  気乗りはしなかったが、鬱屈を誰かに吐き出さずにはいられない。あみちゃんなら良い愚痴相手になってくれるはずだ。  そう思った僕は会って早々、自分が追い出し部屋行きになったことを話した。

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    • 『Tailcoat』  二着目「Mr.ALL THREE」

       僕は社長に会議室へと呼び出されていた。  原因として思い当たる大きな出来事が一つあった。  僕は3Dcadソフトの講習を主な仕事としているが、現在、全世界を襲っている金融危機の影響によって、今後の予定が全て白紙となってしまったのだ。  一体、どんな話を切り出されるのか。出来れば聞きたくない。  そんな心情が表れ、恐る恐る扉を開く。 「失礼します……」

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      • 『Tailcoat』  一着目「youthful days」

        「「「「おかえりなさいませ、ご主人様っ! お嬢様っ!」」」」  カランコロンと来店を表す鐘の音が鳴るやいなや、近くにいたメイドさん達が駆け寄ってきて、軽やかな声でにこやかに出迎えてくれた。  僕と彼女のあみちゃんは思わず圧倒されてしまう。メイド喫茶に初めて来たというのがとても分かりやすかったと思う。  メイドさんはそれぞれ違った個性を備えているようだった。綺麗な黒髪ロングで清楚な様子の子もいれば、金髪で見るからにギャルな子がいたり、ツインテールをくるくるとカールさせた如何にも

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        • 『Tailcoat』  零着目「Prologue」

          広がりのある空間内にヴィクトリアン調のテーブルや椅子、ソファが立ち並んでいる。  等間隔で並んだそれらには、この場に相応しい華やかな女性たちが座っており、その前のテーブル上には心ときめくデザートプレートやアフタヌーンティーセットが用意されていた。ティーカップのコレクションはどれも滑らかな質感に瀟洒なデザインだ。頭上から降り注ぐ光によって艶めいている。  天井には煌びやかなシャンデリアが燦然と輝いており、壁面や柱には印象派やそれに類する絵画が飾ってある。それらは豪華絢爛な洋館内

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