日々を積み重ねる2

完成を目指してしまうと、わたしはいつまでも終わることができず時間を使ってしまうのです。
なので最近はほどほどに気を楽にして、とにかく終わらせてしまうことを優先します。
すると不思議と、何を足して何を引けばいいのかが見えるようになります。序盤で行ったり来たりするより、とにかく埋めてしまった後で全体を遠くからぼんやり見る方が、その上で直感で判断する方が自分の本当に目指すところが見えやすいです。

どうしてそういうふうにするかというと、ぱっと見の印象とリズムを常に大事にしたいからです。
色を乗せる前の、粘土の造形にいちばん時間と気を使うのはそのためです。
シルエットとデティールがきちっと決まれば、まるで時が止まったように美しく見えます。
全体のデザインもかなり大事にはしていますが、基本的にはシンプルさを重要視しています。
限界まで削ぎ落とす作業と、必要な要素やシルエットを盛り込む作業を同時に行います。
簡単にはいきませんが、最高の美しさがそこに宿ると信じて、必要だと思ってやっています。

昔は個性を出そうとするあまり、デフォルメやデザインに力を入れていました。
それも後悔はしていません。
未熟ながらも熱量に任せてやりたいことを早めにやるのはよい事でした。
(若くて体力と情熱がある時にもっとたくさん形にすればよかったとも思います。形にならなかったデザインのメモも後になってから見ると、アイデアを出したい時に助かる事が多々あります)
それはそれとして、もし時間が許すなら基礎にもっと力をいれて、もっとあらゆることを勉強することも大事でした。
これは今だから思うことですが。(昔は昔でやれることを精一杯やりました)
ここまでやってきて、結論としては基礎、土台が強ければ強いほど良いと思っています。
わたしは残念ながら天才ではないので、修行僧のようにコツコツやるしかできないのですから、毎日やれる事をがんばるしかないと実感しています。
資料となる本を買ったり、図書館で気になる本を読んで心に引っかかる部分をノートに書き写したり、気になった展示を見に行ったり、作りたいものができれば粘土を触ります。
自分の時間が10年前より格段に増えたので、できることです。(個人的にはこれがいちばん嬉しいです)

最近ファッション雑誌を見た時に「直感で」というワードが目に入り、強く印象に残っています。
ものごとは常に複雑でこんがらがった要素があり、紐解こうと考えているだけで時間がかかります。
それで疲れてしまったこともあります。

今はもっと素直に世界を見つめてみようと意識しています。
光と影があり、生と死があり、善と悪がある。人間も一枚岩ではなくさまざまな面があること。
複雑な世界のその中でわたしは何を美しいと感じるのかを表現を通してあらわしたいです。
できればダークに、そして希望も仄かにあるように。淡い色遣いと、コントラストを残すように。
シンプルでありながらも、狂気じみたものが理想です。
そしてどこか新しいものになっていると良いと思っています。(わたしの表現方法はアンティークや退廃的な色彩を使って昔の映画や写真のようにみせることを目指し率先していますが、さまざまな組み合わせや化学反応でこの世にない新鮮な驚きを与えることも夢見ています)



跳べないウサギ(2022年)

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