田中邦衛さんの死因:老衰を考える

俳優、田中邦衛さんの訃報が報道されました。 88歳、老衰。
「この年齢で老衰?」と思った人も多いのではないでしょうか?
「老衰で死ぬのが理想だが、なかなかそうさせてはもらえない」と多くの高齢者がおっしゃります。現代日本の医療は、死期が訪れたと分かっていても、出来るだけ長く生かそうとするから、だそうです。
呼吸が出来なくなれば酸素吸入、食べられなくなれば点滴や胃ろう、心臓が止まればマッサージ、等々。
・・・昔は老衰で死ねたのに、今では意識がなく回復の見込みがなくても「生き恥を晒させられ」、肺炎・心不全などの死因が来るのを待つので老衰では死なせてもらえない。
「老衰」の死亡診断書を書くのは医者の恥(敗北を認めること)と教えられた、という話まであります。

「患者よガンと闘うな」の著者、近藤誠医師に対しては賛否両論あることを承知の上、彼自身のリビングウィルの例があるのでご紹介します。
私もこのように書こうと思っており、皆様のご参考になればと思います。

『近藤誠のリビングウィル』抜粋:
意識を失っているか、呼びかけに少し反応するだけの私に、
 ・救急車を呼ばないでください。
 ・人工呼吸器をつけないでください。
 ・自力で飲食できなければ、無理に口に入れないでください。
 ・点滴・チューブ栄養・昇圧薬・輸血・人工透析を含め、延命のための治療を何もしないでください。 すでに行われているなら、すべてやめてください。
 ・もし私が苦痛を感じているようなら、モルヒネなど痛みを和らげるケアはありがたくお受けします。
  (アスコム社発行「医者に殺されない47の心得」より)

私の想像ですが、生前の田中邦衛さんはこのようなご意思をご家族に伝えていたため、静かに老衰で逝くことができたのではないかと思います。
出来ればご遺族がそのことを公表し、現代日本の医療に一石を投じて頂ければ、世の中が変わる(良くなる)かも知れません。

欧米諸国では、ホスピスなどで静かに最期を受入れる(延命治療をしない)のが普通だそうです。
戦後の日本で広く行われるようになった延命治療(=老衰死の否定)は、日本の医療保険制度や年金制度に根差していると思われますが・・・色々な議論のある(闇深い)分野なので、今日はここまでにしておきます。

田中邦衛さんのご冥福をお祈りします(合掌)

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