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交流によって攻撃性は抑制できる?

ハエを使った研究例ですので、これを人類にあてはめて良いものかどうか、はもちろんあるのですが、人の攻撃性を司る遺伝子があって、そのON/OFFは集団生活を営んでいるかどうかで変わってくる、という研究例をご紹介します。


攻撃性とは

 攻撃性という感情は、「感情リテラシー事典(大芝義信著)」によると、「怒り」と「予期性」が混合した二次感情であると位置づけられています。要は、自分の大切なものが脅かされそうになったときに、そうなったときの怒りを先取りして発揮されるものなのですね。

 何か目標や試練を乗り越えるべく、攻撃性を発揮する場合は、対象が他者ではないことも往々にしてありますし、健全な形で発揮がされていると考えることができます。これは、向上心や発奮から来ていますので、しかるべきときに発揮されないと、流される人生になってしまいます。

 一方で、そういった自覚がなく、一見、正当に思える表現で延々と他者攻撃を繰り返すのは、コミュニケーションの面でも好ましくない攻撃性表現になってしまいます。穏やかに指摘すれば済むレベルでも、「共感性」に乏しく、「優越性」や「支配欲」に突き動かされてしまっているパターンです。

ハエにおいて攻撃性を司る遺伝子

 ハエであっても、ヒトであっても、集団生活を営んでいく上で、あまりにも攻撃性が高いと平穏な生活が成り立ちません。そこで、そういった攻撃性を抑制するような遺伝子が存在するのではないか、との仮説について検証をしたのがリンク先の研究です。

 この研究グループでは、攻撃性を抑制するのは「nervy遺伝子」と呼ばれるものなのではないか、との結論に辿り着きました。nervy遺伝子をわざと欠損させたハエを遺伝子操作で作り出すと、そのハエは攻撃的になるということだそうです。要は、nervy遺伝子が攻撃性にブレーキをかけているのですね。

 その一方で、nervy遺伝子が存在すると、攻撃性が常に抑制されるかと言えばそうではなく、nervy遺伝子を持っていたとしても、集団生活ではなく個別飼育で育つと、攻撃性は高くなることが分かった、とのことです。孤独に過ごすと、nervy遺伝子がうまく働いてくれない(=攻撃性にブレーキがかからない)ということだと思います。

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/8020/

 また、このnervy遺伝子に相当するものは、ヒトにおいても存在するであろうことが、上記のリンクには記載がされています。

望まざる攻撃性を抑制するには

 そうすると、自分自身に望まざる攻撃性があると自覚している場合、どう対応をすれば良いかと言えば、「積極的に他者と交流を持つ」ことが有効手段である可能性が出てきます。

 「どうも自分は攻撃的なところがある」「人に対して非難をすることを止められない」という人がいたとして、その状態で人間関係にまみれることは危険な気もするのですが、実はそうではない可能性も考えられます。

 もちろん、必要に応じてカウンセリングを受けたり、内省したりといった手段も有効なのかもしれませんが、それと並行して、これまでになかった人間関係・交流づくりを進めていくことも、理にかなった行為なのかもしれませんね。

もしかしたら、自分にはnerve遺伝子がない?

 こういった記事を書くと、自分自身にnerve遺伝子がないのかも?と心配する向きも出てきそうですので、そこはchat GPT o1(汎用で使える中では最もIQが高い)に聞きました。一つの見解としてご覧ください。

結論からいえば、ヒトにおいて “nervy” 相当遺伝子が完全に欠損している(機能喪失型の変異がホモ接合で存在する)ヒト個体は、極めてまれか、あるいは着床前や胎生期に致死となる可能性が高いと考えられます。実際のところ、ヒト集団でどのくらいの割合で見つかるかを示したデータは現時点ではほぼ存在しないと思われます。

以下、少し掘り下げて理由を解説します。

1. 相同遺伝子がヒトでも必須機能を担っている可能性が高い
研究では、ハエのnervyの代わりにヒトの相同遺伝子を導入しても攻撃抑制が機能したと報告されています。
これは、ヒトの相同遺伝子もnervyと同等、または類似した機能をもっているということを意味します。
こうした“発生過程や神経機能に関わる”遺伝子は、たいていの場合「完全欠損がヒトの胚発生において致死になる」か、「重篤な疾患を引き起こす」ケースが多いです。

2. 完全欠損はしばしば胎生期に淘汰される
もし遺伝子が「生存や神経発達に不可欠」な働きを担っている場合、遺伝子が欠損した個体は着床前あるいは胎生期に淘汰されやすいと推測されます。
例えば、ヒトでも重要な転写因子(遺伝子の働きを制御するタンパク質)を完全に失う変異は、出生前に流産につながることがしばしばあります。

3. 損傷(部分欠損)変異の保有者が非常に稀に存在する可能性
「まったく機能がない」わけではないが、「部分的に機能が低下している」ような変異は、稀にヒト集団内でも見つかる場合があります。
こうした変異を**loss-of-function変異(機能低下型変異)**と呼び、近年の大規模ゲノム解析により、人間1人あたり平均20個程度は何らかの遺伝子で機能低下型変異を保有していると言われています。ただし、それが必須機能遺伝子の場合は極めてまれです。


4. したがって、完全欠損ホモ接合体はほぼいないと予想される
現在のところ、“nervy”相当のヒト遺伝子が**「完全に欠損(機能がほぼゼロ)」**している個体が健康に生まれ、生存しているという報告はほとんど見つかりません。
ゲノムデータベース(ExAC、gnomAD など)や医学文献を見ても、もし見つかったとしても極めて稀(あるいは未発見)、もしくは早期致死により出生に至らないと考えられます。

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