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「限りある時間の使い方(オリバー・バークマン)」

 時間管理の本質を語っています。時間術の本は数多くあり、大半が「効率化」に重きを置いています。この本では、「時間に逆らわない」生き方を進めています。


時間を管理するという執着を手放す

 なぜ、時間や未来を管理できると思うのか、と本書は説いています。身の回りは偶然や不確実性に溢れているので、そもそも、「先を見通して行動する」ことを完全にこなすのは不可能です。

 目の前の一日、一週間すら思い通りにならないと考えると、自然と「今」に目が向いてきます。「いつか、何かを」という思いを持つことは重要ですが、そこに囚われすぎてしまうと、「今」を楽しめなくなってしまいます。

 「今、この時間を何とかしよう」と考えるのではなく、「自分は今、ここにいる」と考える。それを静かに受け止めることで、時間に対する向き合い方は変わってくるはず、と著者は呼びかけます。

やることを減らして選択肢を狭める

 人生は、限られた選択肢、有限の未来、という厳しい現実に向き合いましょう、と本書は言っています。「どうしよう」「何から手をつけよう」「すべてを完璧に」という思いを手放すために、以下の3つの方法でタスクを減らしましょう。

① まず自分の取り分をとっておく

 人生で何かやりたいことがあるのであれば、それをするのは「今」です。「後で時間が余ったら、このやりたかったことに取りかかろう」では、時間はどんどん過ぎてしまい、何も残らなくなってしまいます。自分の計画性に頼りすぎると、やりたいことをやる時間はなくなります。

② 「同時進行中」のタスクを3つまでにする

 「自分の能力は有限」という事実を受け入れて、大きすぎるタスクは分割し、同時に取りかかるものを3つまでに制限することを推奨しています。何かを新しく始めるときは、何かをやめるとき。そうすることで、小さなことをコツコツ進めることができるようになります。

③ 優先度「中」を捨てる

 「やることがいっぱい、ひとまず、これからやってみるか」という考えが、人生にとって最も魅力的な選択肢を後回しにしてしまいます。優先度を厳密に考えて、優先度が「中」ていどの魅力の選択肢は、ひとまず置いておくか、可能であれば捨ててしまうこと、と著者は進めています。

人生を生きはじめるための5つの質問

 そして、取り組むことを絞ったうえで、「目の前の事に取り組む」ことの連続が人生を豊かにすると述べられています。そういった生き方を具体化するための5つの質問です。

問い1 生活や仕事のなかで、ちょっとした不快に耐えるのがいやで、楽なほうに逃げている部分はないか?

 目の前の不安から逃れるための、決断延ばし、気晴らし・・・そういった行動が人間を「小さく」すると本書では述べられています。「どうすれば幸せ?」ではなく、「この決断は自分を大きくするか、小さくするか」で考えていこう、との問いです。

問い2 達成不可能なほど高い基準で、自分の生産性やパフォーマンスを判断していないか?

 「いつの日か、十分な時間が取れるはず。この、目の前の不可能ともいえる仕事をこなしていけば・・・」そういった思いでいるのであれば、まずは、その「不可能な」仕事をすべて地面に投げ出して、その瓦礫の中から、重要なものだけを取り出してはいかがでしょうか、との問いかけです。

問い3 「ありのままの自分」ではなく、「あるべき自分」に縛られているのは、どんな部分だろうか?

「人はある年齢になると、衝撃的なことに、自分がどんな生き方をしようと誰も気にしていないことに気づく。人の期待に応えることばかり考え、自分を後回しにしてきた人にとって、これは非常に恐ろしい発見だ。自分のことを気にしているのは自分だけなのである」

心理療法家:スティーブン・コープ

 誰かに認めてもらえると安心できる、という思い込みを捨てて、自分の好きな、楽しいことに集中をしてみる。それが時間の使い方を変えるきっかけになるのかもしれません。

問い4 まだ自信がないからと、尻込みしている分野は何か?

 どんなに立派な企業、個人、政治家でさえ、何をするのにも本当は手探りの連続。そういった現実を受け入れれば、「まだ、自分には準備が足りないから」とためらっていた物事に手がつけられるのかもしれません。

問い5 もしも行動の結果を気にしなくてよかったら、どんなふうに日々を過ごしたいか?

 自分の手掛けていることで、本当の意味で、自分の生きているうちに結果が出るものなんて、まれなもの。結果なんて知りようがない、そんな状況でも、遠い未来の誰かのために、今日に出来ることは?

まとめ

 「自分はやりたいことがあるのに時間がない!」という人に、本書ではタスクをまずは減らす3つの方法を示し、そして、人生をより豊かに、「目の前の事に取り組む」ための5つの問いを投げかけてくれています。

 そういった自問自答を経た後に、「自分にはこれしかできない」が「自分はこれだけを、まずはしていればいい」に変わり、その連続した瞬間が自分の積み重ねになるとすれば、自分の限られた時間と能力の中でも、自分らしい一歩を踏み出していることになるのでは、とまとめられています。

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