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理系院生:アカデミアと企業のギャップ

 理系若手社員が感じやすい、大学研究室と企業現場のギャップを書きます。理系大学院生で、卒業年・企業への就職が決まっている方への記事です。


なぜギャップを感じるのか

 私は民間企業の研究職を長年務めています。自分が若いころは、とにかく必死で、入社して周りについていくだけで精一杯でした。この年になって、客観的に若手社員の様子を見ることができるようになり、なぜ、若手が企業文化にギャップを感じるのか、どこを乗り越えられれば楽になるのか、分かってきました。

 いわば、大学の研究室というのは、一つの中小企業のようなものだと私は思います。私の指導教官も、「自分は中小企業の社長みたいなもの」と言っていましたし、いわゆる「勤務時間」もある程度は定められ、報告会という名の「会議」や、卒業時には成績がつくという「勤務評価」もなされます。

卒業時の「勤務評価」で、当時の私は少し困ったことになったのですが、それは別の機会に書こうかと思います。

 修士の2年目以上にもなれば、後輩の「育成指導」も「業務」として加わります。いわば、疑似職場体験をしっかりと3年間以上は経験をして企業現場に入られる方が多いですので、自然とギャップは感じやすい状況になるのだと思います。

 ですので、「ああ、ギャップは起こり得るんだな」とまずは前提していただくことで、気持ちは楽になるはずです。

ギャップが生じやすい領域と対策

 それでは、大学研究室と企業でギャップが生じやすい領域と対策を見ていきましょう。

① 上司や同僚との関係構築の仕方が分からない

 これは当たり前のことなのですが、悩みのほとんどは人間関係に由来しますので、上司や同僚との接し方が一番に来ます。

 一番多い悩みは、「周囲にどう頼ったらいいのか分からない」「周囲から自分への期待感が見えてこない」という、相互依存の確立や貢献意欲に関わるものです。特に、若い世代は「人に貢献したい」「組織に貢献したい」という強い貢献意欲に、「自分の力を発揮して周囲に認めて欲しい」という承認欲求が混在しています。

 一番解決に近いのは、「まず、自分の身を委ねて、周囲に安心して頼ってしまうこと」。まずは、「人のサポートを得る」という体験を十分にし尽さないと、どういった行動が企業の場面で「ありがたい」のか、実感できません。そのうえで、「人の役に立つ」という実践を重ねていくことで、接し方が安定してきます。

脅すわけではないのですが、私はよく、「愛嬌は〇年目まで。そこまでに十分に得るものを得ておくこと」という趣旨のアドバイスを若い人にします。若い人が周囲を頼って、邪険に扱われるリスクは、よほどのことがないと低いはずです。まずは「人のサポートを得る」という体験を十分にしておくと、自然と、人を助けられる方になるように思います。

② 実験計画の否決率が高い

 「実験計画が否決され、なかなか自分の思った通りにさせてもらえない」という意見もよく聞きます。

 特に、実験計画自体が、若手にとっては自分の価値観の集大成に疑似的になっていることもまれにあり、「計画を否定される」=「自分を否定される」ような感覚も覚えるようです。

 ですので、ここも、「実験計画の否決は、自分自身を否定されることではない」「一回で計画が通る確率なんて、本当に低いもの」という前提を持っていただくと良いかと思います。

 もし、実験計画書が複数ページに渡るときには、(上司の好みにもよりますが)、手書きででもA4で1ページ程度の要約を準備しておくと良いと思います。

 そうすると、全体の中のどこで突っ込みが入ったのかも明確になりますし、「全体OKだったら細部は任せるか」というタイプの上司の場合には、計画の承認もされやすくなると思います。

③ 説明が長々としてしまう、周囲に理解してもらえない

 どうしても、自分の説明が簡潔にならない、要領を得ない、周囲にどれくらい理解してもらえているのか・・・という悩みも多いです。

 以前の記事でも書いたのですが、大学の研究室は少人数の、いわば「ムラ社会」です。そこから、企業の研究グループ(これも、多くても10名程度でしょうか)という別の「ムラ社会」に来たわけですので、必然的に、新入社員の説明は「シンプルすぎる」か「過剰気味」になりがちです。

シンプルすぎる場合の気持ちの例:大学では、この程度の説明でも皆に分かってもらえていたので、ここでも大丈夫だろう。

過剰すぎる場合の気持ちの例:初めての人だらけなので、自分の考えをしっかりと分かってもらえないといけない。もっとしっかりと説明しないと。

 こちらですが、段階的に説明の仕方のトレーニングを積んで向上を諮っていく方法もありますが、より簡単なのは、周囲にフィードバックを求めることです。

 「さっきの説明、要領を得ていましたか」と周りに聞くことで、改善点があれば教えてもらえますし、OKの感想をもらえたら、自分に自信がつきます。そうこうしているうちに、3年も経てば、説明がこなれてくるのが一般傾向ですので、それほど心配をする必要もなくなります。

まとめ

 理系大学院生が企業への入社後に感じるギャップを書きました。大学の研究室が「疑似職場」であることから、ギャップを感じやすい背景にあること。また、主たるギャップの例と対策をご説明しました。

 何か一つ、蛇足で付け加えるとすれば、「世の中に、そんなに悪い人はいない」ということです。何かに困ったら、「こういった事に困っている」と周りに気軽に言ってみたら、それなりのアドバイスは来るはずです。

 そこを悶々とこじらせてしまうよりは、ギャップを感じたら早めに言葉に出してみることをおススメします。

 本件、もっと総合的なアドバイスの記事もありますので、リンクをさせていただきます。


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